〈時政パパ、めっちゃいいキャラしてる〉、〈この役者さん何者だ〉、〈誰だか知らないけど存在感がすごい〉──1月9日にスタートしたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、放送直後からSNS上で話題になったのが、小栗旬(39)演じる主人公・北条義時の父、時政役の坂東彌十郎(65)だった。
「初めてこの役者を見たという視聴者も多かったようですが、歌舞伎界では知る人ぞ知る名役者。ファンからは“やじゅさん”と親しみを込めて呼ばれています」
そう話すのは、演芸誌のベテラン記者だ。
父は映画『地獄門』(1953年)やNHK大河『源義経』(1966年)など数々の時代劇に出演した歌舞伎役者の坂東好太郎。彌十郎も幼い頃から父の舞台を見て歌舞伎の世界に憧れたが、思うような活動ができなかった。
「原因は高すぎる身長です。現在も183cmと歌舞伎界随一の高身長ですが、幼い頃から周囲より頭一つ出ており、子役として使えなかったんです。初舞台は17歳で、これは歌舞伎役者としてはかなりの遅咲き。本人も“最大の敵は自分の背でした”とよく話していた」(演芸誌ベテラン記者)
その後、縁あって3代目市川猿之助(現・猿翁)の元で修業を積み、「スーパー歌舞伎」で人気者に。主役を支える脇役から敵役まで幅広い役柄ができる貴重な存在として、数々の舞台に上がった。
「特に彌十郎さんを重用したのが、今は亡き18代目中村勘三郎さんと10代目坂東三津五郎さん。3人は幼馴染みで、歌舞伎界でも戦友のような存在でした。彌十郎さんの人気が高いのは、勘三郎さんと三津五郎さんを見守った“濃いファン”がついているからです」(同前)
ちなみに『鎌倉殿』の脚本の三谷幸喜とは、2019年に初仕事をこなしている。三谷が作・演出した歌舞伎『風雲児たち』に彌十郎が出演。
「江戸時代に伊勢国からロシアに漂流した日本人団の一人を演じ、その芝居に三谷さんが胸打たれた。この縁で大河への出演が決まったのです」(歌舞伎関係者)
大ブレイク待ったなし。
※週刊ポスト2022年1月28日号