今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝を演じる大泉洋(48)。笑えるシーンもありつつ、時折見せる冷酷な表情に初回から多くの視聴者が引き込まれた。どんな役も違和感なく演じきる怪優の素顔を、監督・共演者の証言から明らかにする。【前後編の前編。後編はこちら】
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NHK紅白歌合戦の司会を2年連続で務め、大河ドラマ出演は『龍馬伝』(2010年)、『真田丸』(2016年)に続いて3回目。朝ドラ出演歴もある大泉洋は、今や全国の老若男女から支持を集める人気俳優の1人である。
演じる役柄はバラエティに富み、時代劇はもちろん、現代ドラマでもコミカルな役から二枚目まで幅広くこなす。
〈芸人だよ、ばかやろう〉〈笑われるんじゃねえぞ! 笑わせるんだよ〉
ビートたけしの誕生秘話を描いた映画『浅草キッド』(劇団ひとり脚本・監督、Netflix)では、たけしの師匠で“伝説の芸人”と呼ばれる深見千三郎を好演し大きな話題を呼んだ。同作で大泉とダブル主演(たけし役)を務めた俳優の柳楽優弥(31)が語る。
「大泉さんは人を笑わせられる人。一緒にいて学ぶ点しかないです。僕自身もコントをやるシーンが多くありましたが、大泉さんがコントをするシーンの段取りを見るだけで面白く、勉強にもなりました。大泉さんが演じた深見師匠は資料があまり残っていない方だそうですが、役作りは大泉さんのイメージでカバーされたのかと思うと、凄いなと思います。
劇中、左手の指を事故で失った深見師匠に僕(たけし)が『師匠の左手、腹減って自分で食べちゃったって本当ですか』と話しかけて距離が一気に縮まるシーンがあるのですが、本番直前に大泉さんが『こうしてみない?』とアドリブの提案をしてくださり、掛け合いの漫才みたいにセリフを繋いだらウケたので、流石だなと思いました」
撮影現場の空気を敏感に読み、その場をコントロールする術にも長けていたという。
「現場に大泉さんがいるといい空気になるんです。ちょっと張り詰めすぎていたら和ませる一言を言ってくださるし、逆に緩くなりすぎている時は良い緊張感を作ることもできる。視野が広く、冷静な大泉さんの振る舞い方は参考になります」(同前)
共演は2006年以来3度目の2人だが、今回の撮影中、柳楽は大泉のある姿が印象的だったという。
「メイク中にも台本を読んでいたんです。そういう真面目さがなければ現場であのように振る舞えないですよね」
柳楽にとって大泉はどんな存在なのか。
「俳優もできて人を笑わせることもできる人。一緒に仕事をしていても助けられているなと感じますし、憧れますね。師匠です」