昨年末のNHK紅白歌合戦で2年連続となる司会を務め、今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝を演じる大泉洋(48)。笑えるシーンもありつつ、時折見せる冷酷な表情に初回から多くの視聴者が引き込まれた。どんな役も違和感なく演じきる怪優の素顔を、監督・共演者の証言から明らかにする。【前後編の後編。前編はこちら】
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小松菜奈(25)演じる女子高生がバイト先のファミレス店長(大泉洋)に恋をする設定の映画『恋は雨上がりのように』(2018年)の監督・永井聡(51)は、俳優・大泉洋の魅力をこう語る。
「ふだんニコニコしている俳優さんほど、現場ではストイックで寡黙になる人が多い。でも彼は現場に入ってもそのままで、ずっと喋っていました。若い演者たちを緊張させずに楽しませたいと思ったらしく、休憩中もギャグを言って和ませ、雰囲気作りからやってくれる。若い子たち同士で固まってきゃあきゃあ言い合っている時はまるで仲間はずれのおじさんみたいで、たまに会話に入れてもらえるとめちゃくちゃ嬉しそうな顔をするんです。『入っていいんだ、俺』みたいに(笑)」
映画公開時には、こんなエピソードがあったという。
「北海道の劇場の初日の客入りや、観客が映画のどこで笑っていたかをずっと気にしていました。『あそこのシーン、ウケてた?』とスタッフに聞いて、『いや、ウケてませんでした』と返されると『そっか~』って(笑)。素朴に北海道の人に認めてもらいたがっているようで、もしかしたら彼はまだ北海道から出てきたまんまの彼なのかもしれません」(同前)
そんな大泉の「北海道愛」について、彼がレギュラー出演した深夜番組『水曜どうでしょう』(1996~2002年、北海道テレビ)のディレクター・藤村忠寿(56)は「これがさあ、あいつのうまいところでね。北海道愛を演じているんですよ。見てたらわかる」と爆笑する。
「普通の立身出世はある意味故郷を捨てて、故郷に嫌われても中央で成功するのがセオリーでしょう。でも大泉洋は違う。『自分は北海道を本当に愛しているのに、中央に呼ばれちゃったから仕方なく行っているんですよ』と。そう演じれば、地元の人も彼のことを愛してくれる(笑)。あいつの計算ずくはテレビに初めて出た時からずっとなんですよ。もっと言うと本能なんだろうね」
女優の筧美和子(27)は、『東京喰種 トーキョーグール』で共演した際、思いがけず応援してもらった思い出を話す。
「私が間違えて大泉さんの台本を持って帰ってしまったことがあったんです。そのことを打ち上げの場で謝罪したら、気さくに接してくれて『今後、お芝居とかやっていこうと思っているの?』と。『やりたいです』と言ったら、『見守ってます』と背中を押してくれました」
そんな愛されキャラの大泉を藤村はまたしても「あいつは全人類に愛されたいやつなんで」と笑いつつこう話す。
「でもね、大泉洋には裏表はないからね。みんなに愛されたいと思っている、天性のテレビタレントだよね」