高血圧患者の5人に1人が他に服用している薬の副作用によって、症状が悪化しているというデータがある(米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのティモシー・アンダーソン氏らの研究グループ調べ)。
日本高血圧学会が作成した『高血圧治療ガイドライン(2019年版)』には、「薬剤誘発性高血圧」の項があり、服用することで血圧を上昇させて高血圧を誘発し、降圧剤の効果を減弱する可能性が指摘されている8種の薬が挙げられている。具体的には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、甘草(カンゾウ)製剤、グルココルチコイド、シクロスポリン、エリスロポエチン、交感神経刺激薬、経口避妊薬、がん分子標的薬の8つだ。高血圧患者にとって、これらの薬は要注意ということになる。
健康維持のために漢方薬を飲んでいる人は多いが、漢方薬である甘草製剤も血圧上昇を招く薬として挙げられている。
「漢方薬も医薬品ですので長期間の服用や体質によっては副作用が生じます。『高血圧治療ガイドライン』で血圧を上昇させると指摘された甘草は漢方薬のおよそ7割に入っています。成分表に〝甘草〟という言葉が入っていなくても、よく服用されている葛根湯や小青竜湯などにも含まれている。一つの薬剤に含まれている甘草はわずかですが、複数の漢方薬を併用すると、積み重なって影響が出てしまうこともあります」(銀座薬局代表の長澤育弘薬剤師)
秋津医院の秋津壽男院長(循環器内科医)は、高血圧で整形外科にも通っている人は、処方薬を確認することを奨める。
「甘草湯は、こむら返りに効果的な薬剤として広く処方されていますが、漫然と長く服用していると血圧が上昇することがあります。実際に、血圧上昇の要因がないのに上昇している患者さんに、服用している薬を尋ねたら、甘草湯を処方されていたケースがありました。
服用している人も多いメタボを解消する『ナイシトール』は防風通聖散という漢方薬で、これにも甘草が含まれています。漢方成分が含まれている市販薬は多いので、一度確認しましょう」