国内

新型コロナ「心の後遺症」が起こるのはなぜか、長期間に及ぶことも

(写真/Getty Images)

精神医学的な後遺症に悩まされる人も少なくないという(写真/Getty Images)

 年が明けるとともに到来したオミクロン株による新型コロナウイルス感染の第6波。ただ、オミクロン株は重症化しにくいという指摘もあり、実際に重症者や死亡者はまだわずかな人数にとどまる。

 高熱が出るわけでもない、ただ喉がイガイガ、鼻がグズグズするだけ。それなのに、感染したことを心から後悔する人が後を絶たないという──。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが指摘する。

「無症状や軽症でも、体内にウイルスが長期に残留して、しばらくしてから『後遺症』として発現する症例が確認されています。無症状や軽症だからといって、オミクロン株は決して油断できません」

 特に懸念される厄介な後遺症が、精神や神経に影響を与えるものだ。

「新型コロナの後遺症は、外傷性脳損傷やパーキンソン病、アルツハイマー病のように脳の神経細胞が変性してしまう病気や、脳や人格に影響を及ぼすさまざまな慢性疾患の症状によく似ていると指摘されます。それらの疾患には、感情が不安定になる、人格が変わる、被害妄想に悩まされるといった精神症状が含まれます」(一石さん)

 実際、昨年11月に発表されたアイルランドの医師チームの研究では、感染から6か月間の神経学的または精神医学的な後遺症の推定発症率は33.6%に上った。

 昨年4月に発表された英オックスフォード大学などの研究でも同様で、新型コロナ患者の約34%が回復から6か月以内に精神・神経疾患を発症していた。

「おおよそ3人に1人が精神・神経疾患を発症したとの結果でした。疾患のうち最も多かったのは不安障害(発症確率17%)で、うつ病などの気分障害(約14%)が続きました」(一石さん)

 新型コロナから回復しても、後遺症が最悪の結末をもたらすケースもある。

 米人気ドラマ『ドーソンズ・クリーク』の脚本で知られるハイディ・フェレールさんは2020年4月に新型コロナに感染した。それから原因不明の神経性の震えや視界のぼやけ、不眠などの後遺症に悩まされるようになり、2021年5月に自ら命を絶った。50才だった。ハイディさんの夫であるニック・グーテさんが女性セブンの取材にこう語る。

「妻は1日90分のウオーキングを欠かさず、食事はオーガニックで、熱心な読書家でした。しかし新型コロナに感染してから、脳に霧がかかったように物事が思い出せなくなる『ブレインフォグ(脳の霧)』や神経痛、不眠などに長く悩まされるようになった。治療の見込みもなく、これ以上地獄にいるより死んだ方がマシと思い込んだのか……この世を去ってしまいました」

左からハイディさん、息子のベクソン・グーテくん、ニックさん

左からハイディさん、息子のベクソン・グーテくん、ニックさん

 日本でも、ハイディさんのように「心の後遺症」で苦しむ人は多い。

 昨年10月に感染した都内在住の会社員・A美さん(33才)は、自宅待機後に職場復帰してからも変調が続いた。

「渡された書類やデータの意味がすぐに理解できず、内容を把握するまでにそれまでの3~4倍の時間がかかるようになりました。周囲の人の話し声やキーボードを打つ音に敏感になって、書類を投げつけて暴れ出したい衝動に駆られるようになりました」(A美さん)

 昨年11月に感染した千葉県在住のトラック運転手・Bさん(51才)も業務に支障が出るようになった。

「トラックのアクセルとブレーキを間違えてコンビニに突っ込みそうになったり、何度も行った倉庫の場所がわからず、ナビを使わざるを得なくなりました。車体の大きさが把握できなくなって、まっすぐ車を駐車できなくなりました」(Bさん)

 今年1月にオミクロン株の感染がわかった埼玉県在住の医師・Cさん(56才)の証言。

関連記事

トピックス

海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
政治資金の使途について藤田文武共同代表はどう答えるか(時事通信)
《政治資金で使われた赤坂キャバクラは新規60分4000円》維新・奥下議員が訪れたリーズナブルなキャバの店内は…? 「モダンな内装に個室もなく…」 コロナ5類引き下げ前のタイミング
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
神奈川県藤沢市宮原地区にモスクが建設されることが判明した(左の写真はサンプルです)
《イスラム教モスク建設で大騒動》荒れる神奈川県藤沢市 SNSでは「土葬もされる」と虚偽情報も拡散 市議会には多くの反対陳情が
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
いまだ“会食ゼロ”だという
「働いて働いて…」を地で行く高市早苗首相、首相就任後の生活は“寝ない”“食べない”“電話出ない” 食事や睡眠を削って猛勉強、激ヤセぶりに周囲は心配
女性セブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
逮捕された村上迦楼羅容疑者(時事通信フォト)
《闇バイト強盗事件・指示役の“素顔”》「不動産で儲かった」湾岸タワマンに住み、地下アイドルの推し活で浪費…“金髪巻き髪ギャル”に夢中
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年12月3日、撮影/JMPA)
《曾祖父母へご報告》グレーのロングドレスで参拝された愛子さま クローバーリーフカラー&Aラインシルエットのジャケットでフェミニンさも
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
指示役として逮捕された村上迦楼羅容疑者
「腹を蹴れ」「指を折れ」闇バイト主犯格逮捕で明るみに…首都圏18連続強盗事件の“恐怖の犯行実態”〈一回で儲かる仕事 あります〉TikTokフォロワー5万人の“20代主犯格”も
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《広瀬すずのぴったりレギンスも話題に》「アスレジャー」ファッション 世界的に流行でも「不適切」「不快感」とネガティブな反応をする人たちの心理
NEWSポストセブン