ライフ

水島新司さんが作品に「野球ができないキャラ」を入れていた理由

人柄も鷹揚だった水島新司氏(時事通信)

人柄も鷹揚だった水島新司氏(時事通信)

「グワァラゴワガキーン」という岩鬼の打球音、「ブフォ」というあぶさんの酒しぶきといった擬音語が、実際の音のように脳裏に木霊する……。高校野球漫画の金字塔『ドカベン』をはじめ、『あぶさん』、『男どアホウ甲子園』、『野球狂の詩』など数々の名作野球漫画を生み出した漫画家の水島新司氏(以下敬称略)が1月10日に肺炎のため東京都内の病院にて82歳で亡くなった。

 漫画を通じて少年たちに野球の素晴らしさを伝えてきた水島の死去は、野球界のみならず芸能、政界と幅広い層から悲しみのコメントが寄せられるほど。世代を超えて水島漫画を見て育った人は数知れずだ。

 水島野球漫画の人気の秘密は、なんと言っても脇に控える多士済済のライバルたちと死闘を繰り広げる主人公のキャラクターにある。主要キャラのほとんどは、水島の生い立ちが投影されていると言っても過言ではない。

 新潟市で生まれた水島の生家は鮮魚店を営んでいたが、父親の借金がかさみ、高校進学を断念するほど困窮していた。18歳で大阪に出て漫画家を目指したのには、父親の借金を返済する目的もあった。壮絶な人生を歩んできた水島は、念願だった高校野球をやることもできなかったが、父親に対して恨みごとのひとつも言わなかった。

 そんな父親に重ね合わせたのが、『ドカベン』の岩鬼正美と言われている。トリックスターとも云うべき特異なキャラクターで、いつも葉っぱを咥えて学制帽を被って自分を高らかに賛美しまくる豪放磊落な姿は父親をモチーフにしたものでもあり、そんな岩鬼を水島は大好きだったのだ。

 野球ができなかった水島にまつわるこんな逸話がある。中学卒業後、丁稚奉公に出ていた水島は仕事の帰り道の土手で、ある高校の野球部の練習を毎日見ていた。ある日、野球部の監督が水島を呼び止め、ノックでも受けないかと誘い、水島はノックを受け見事にさばいた。監督は部員を集めて言った。

「いつも見ているだけの水島くんがこれだけ出来るのだから、お前らももっと頑張れ」

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン