トップ棋士たちが鎬を削る8つのタイトル戦のひとつである王将戦には異色の「勝者の記念撮影」がイベントとして設けられている。各対局の勝者が終局後に、対局会場にちなんだコスプレをして撮影され、主催社であるスポーツニッポンの一面を飾るのが恒例だ。
第71期王将戦では、タイトルを保持する渡辺明名人(37)に、5冠を目指す藤井聡太竜王(19)が挑戦している。静岡県掛川市にある「掛川城 二の丸茶室」で行なわれた1月9、10日の第1局を制した藤井竜王は、同市にある天竜浜名湖鉄道の掛川駅を訪れ、乗務員用の制服と帽子を身につけて、車掌のコスプレ姿をお披露目した。
過去には羽生善治九段が武将に扮したり、渡辺名人が「大阪王将」の法被を着てできたての餃子を頬張ったり……と撮影のテーマは様々。一体どんなふうにテーマを決めているのか、主催社のスポーツニッポン新聞社に尋ねた。
「あくまでも将棋ファンや開催地の方々に喜んでいただくのが最大の目的なので、決してコスプレに限ったものではございません。これまではカメラマンたちがアイデアを複数出し、開催地の方々や関係者のご意見も聞きながら進めて参りました。
対局前から地元の特産品や観光地などを意識した撮影計画を用意し、複数の選択肢の中から撮影場所をお借りする交渉などを行ないます。そのうえで2日目の対局後、勝者の先生に承諾を得ながら決まっていきます」(ビジネス開発局事業部)
限られた「15分間」での撮影
藤井竜王と言えば“鉄道ファン”として知られているが、今回のテーマ「車掌」はそれを考慮してのことなのか。
「藤井竜王が“鉄道ファン”であることは存じ上げていました。だから車掌をテーマにするというわけでもないのですが、限られた撮影時間と場所で先生にも楽しんでいただけるような最良の選択をしたいという思いでした。
今回は藤井竜王が掛川駅から新幹線に乗るまでの約15分間でいかにご負担をかけずに撮影できるかが重要でした。地元関係者の協力もあり、JR掛川駅と隣接している『天竜浜名湖鉄道』の全面協力を得られることになり実現しました」(同前)