大相撲初場所は横綱・照ノ富士、関脇・御嶽海らによる優勝争いが最終盤までもつれる白熱の展開となっている。その一方で、場所後には昨年末に明らかになった「違法賭博」疑惑について、関与した力士の処分が発表される見通しだ。すでに名前が挙がっている力士以外の関与はないのか。日本相撲協会はどのような調査をしたうえで、処分を決めるつもりなのか。
相撲協会が、木瀬部屋所属の英乃海と紫雷に違法賭博の疑いがあるとして、初場所を休場させると発表したのは、番付発表を2日後に控えた昨年12月22日のことだった。芝田山広報部長(元横綱・大乃国)は「師匠の木瀬親方(元前頭・肥後ノ海)から違法賭博への関与の疑いがあるため、休場させると連絡があったが、詳細は調査中」としたうえで、「この2人だけの調査なのか、それにまだ含まれている者がいるのか。2人だけに限るのかもまだ分からない」と話した。
違法賭博に関与した力士が他にもいる可能性を否定しなかったわけである。相撲担当記者が言う。
「英乃海と紫雷はともに埼玉栄高から日大を経て木瀬部屋に入門している力士です。埼玉栄も日大も、角界入りした多数の力士を輩出しており、そのなかに協会による発表直後から関与が囁かれる力士が複数人いた。問題がどんどん広がっていった2010年の野球賭博事件が思い出されました」
野球賭博事件は当時の大関・琴光喜や大嶽親方(元関脇・貴闘力)など多くの力士や親方の関与が明らかになり、解雇や謹慎休場などの処分が下された。この事件の捜査過程で携帯電話のメールなどから八百長相撲まで発覚し、20人以上が引退勧告や出場停止処分を受けている。
「当初は、コンプライアンス委員会が調査し、初場所の初日となる1月9日までに関与した力士が発表されるという情報が流れていた。場所が始まってから新たに関与した力士がいると発覚すれば騒ぎが大きくなるため当然の見方だが、初日前日になってコンプライアンス部長を務める尾車親方(元大関・琴風)が取材に応じた際には『他の力士の名前は把握していない。いないことを祈りたい』とコメントしていた」(前出・相撲担当記者)
他の力士も調査したうえで関与がないと考えているのか、他の力士は調査していないのか、判然としなかった。緊迫した空気のなかで注目されたのは、最初に名前の挙がった英乃海と紫雷の2人が警察の事情聴取に対して、どのように応対するかだった。大手紙社会部記者はこう言う。
「昨年9月、埼玉県警が摘発した草加市内の違法賭博店の防犯カメラに2人が映り込んでいたことから疑惑が浮上したとされています。2人は警察から事情聴取を受け、違法賭博店への出入りを認めたが、他の力士のことは一切触れなかったという」