他者に恋愛感情を抱かず(アロマンティック)、性的感情を抱かない(アセクシュアル)男女を高橋一生と岸井ゆきのがダブル主演で演じ、話題のドラマ『恋せぬふたり』(NHK総合、毎週月曜夜10時45分〜)。ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏は、女性の主人公を演じる岸井ゆきのの演技を見て、過去の出演作での役柄との共通項に気づいたという。それは何か。
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2022年早々に興味深いドラマが始まった。“アロマンティック・アセクシュアル”をテーマにした『恋せぬふたり』(NHK総合)がそれだ。恋愛やセックスに興味がない兒玉咲子(岸井ゆきの)と、アロマンティック・アセクシュアルを自認する高橋羽(高橋一生)が、世間からの「結婚して幸せな家庭を持ちなさい」という同調圧力から逃れるかのように、自分たちなりの家族の形を求めて同居生活を始める物語。
岸井ゆきのさん演じる兒玉咲子は、スーパー本社の営業戦略課で働く。人望は厚く、勤務態度にも全く問題がない。同居していた両親、結婚して甥っ子たちを見せてくれた妹も大好き。そしていつも明るく笑顔で振る舞う。でもその裏には、恋愛ができないという秘密がある……。ふと、この興味深い設定を見て岸井さんがこれまでテレビドラマで演じていた役柄を思い出した。この人、「表向きは明るく装っていても、実は内側に闇や困難を抱えた役」が多いのでは? と。
周囲からの「圧力に耐える役」が多い
今回気になった“実は闇や困難を抱えた役”というキーワードから岸井さんを意識したのは『モンテ・クリスト伯 —華麗なる復讐—』(フジテレビ系・2018年)。ディーン・フジオカさん主演で話題を呼んだ、通称『モンクリ』である。岸井さんが演じた入間未蘭は、警視庁に勤務する大層な父親を持ち、継母と生活している。両親の前では明るくしながらも、父親が選んだ相手と「結婚しろ」と強要されることに疑問を抱いていた。ラストは魚市場で働く男性と結ばれるという役。兒玉咲子と少し似ているのかもしれない。
『私たちはどうかしている』(日本テレビ系・2020年)でも家同士の政略結婚を背景にしながら、お見合い相手の高月椿(横浜流星)のことがどうしても忘れられず、最後は裸で迫るというシーンも。まさに肉迫。
現在放送中の『恋せぬふたり』を含めても、世間や両親の同調圧力に耐えていることが多い。これは独身代表として言わせていただくが、世間一般に転がっている案件。口に出さずともあなたの周囲の人間も心苦しんでいるかもしれない。役柄ということでややハードではあるけれど、岸井さんが見せてくれた勇姿は独身軍の明るい光なのだ。