2月4日の開幕を前に、北京冬季五輪の準備が着々と進んでいる。フィギュアスケートの会場となる中国・北京市の首都体育館では、リンクの製氷作業が最終段階に入った。リンク中央、氷の下に五輪のオリンピックシンボルがクリアに透けて見えるが、3連覇を狙う羽生結弦(27才)の視界は決して良好とはいえない。
昨年12月、羽生は右足のケガから復帰し、今季初戦となる全日本選手権に出場。4回転半ジャンプに公式戦で初めて挑戦し、両足着氷でダウングレードにはなったものの転倒することはなかった。復帰戦とは思えぬ演技で優勝し、五輪への出場権を獲得した。だが、その代償は小さくなかった。
「4回転半は羽生選手が痛めている右足首への負担が非常に大きいジャンプなので、彼の右足は悲鳴をあげています。日本スケート連盟の公式ツイッターで、羽生選手は“正月返上で4回転半の習得に励む”としていましたが、正月はリンクに立たず静養に努めていたようです。五輪までに回復するのか、心配する声も上がっています」(フィギュアスケート関係者)
不安は古傷ばかりではない。北京五輪はコロナ禍のもとでの開催になる。これまで中国は「ゼロ・コロナ」を掲げ、徹底した隔離政策でコロナの封じ込めに力を入れてきた。だが、感染力の強いオミクロン株が世界的に猛威を振るい始めると、中国の状況も一変する。昨年12月末以降、複数の都市で市中感染が確認され、ロックダウンが始まっている。1月8日には、北京市に隣接する天津市でも市中感染が明らかになった。
「15日にはとうとう北京市内でもオミクロン株の感染者が見つかりました。17日には、中国本土在住者に限って販売予定だった観戦チケットを、一般販売せず、一部の招待客に限定することを発表。学校などの団体客のみに販売することが考えられています」(中国在住ジャーナリスト)
羽生ら選手たちは、競技に集中しながら、感染対策にも気を配らなければならない。懸念材料はそれだけではない。ワクチン接種に伴う、負担の大きさだ。
「北京五輪の規則集である『プレーブック』には、選手は北京入りする14日前までにワクチンの接種を完了しておくことが必要、との記載があります。未接種者は北京到着後に、21日間もの集中的隔離が義務づけられています。もちろんその間、練習はできません。
ワクチンの義務化はアスリートによってはセンシティブな問題。副反応だけでなく、持病のある選手にとっては接種そのものへの不安も大きい。医学的な理由により接種の免除を申請できますが、必ず通るかはわかりません。選手はナイーブにならざるを得ないのです」(スポーツジャーナリスト)