SDGs(持続可能な開発目標)と聞くと、そこまで関心が高くない人にとっては「環境問題のこと」「ジェンダーに関わること」と感じているかもしれないが、実際には環境だけでなく貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー、水、エネルギーなど多岐にわたるテーマを含んでいる。環境やジェンダーに関わることと勘違いする人が出現するのは、テレビでそのテーマばかりを何度も長時間、放送されている影響も大きいだろう。ところが、重要テーマとして繰り返し採用されているにも関わらず、テレビのニュースや制作現場ではしらけたムードが漂っているという。ライターの宮添優氏が、なぜそのような矛盾が生じているのかをレポートする。
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よりよい世界を目指す「持続可能な開発目標」を進めていこうという世界的な取り組み「SDGs」という言葉を、テレビで聞かない日はない。ニュースやワイドショーといった報道・情報番組はもちろん、ゴールデン帯のバラエティ番組などでも「SDGs」が取り上げられている。
いずれも、世界中の人々が人間らしく生きる未来を切り開くには欠かせないものということで、ある意味「ゴリ押し」であっても、正面切って異論を唱える人はほとんどいないだろう。だが、連日のように言い聞かせられると、反対なわけではないけれど、ウンザリする人たちも出てくるというもの。ネット上ではSDGsは「マスゴミ」による一種の宣伝だ、といった指摘もあるが、ではそのメディア関係者はどう感じているのだろうか。
「ニュース番組、情報番組でも色々取り上げていますがね、はっきり言って数字(視聴率)はついてきません。それでも各社、どこもかなり力を入れてやっていますので、それなりに尺(放送時間)は取らざるをえなくなっている」
数字がついてこないテーマを取り上げ続けねばならない苦しい実情を訴えるのは、在京民放X局の情報番組ディレクター・齋藤優氏(仮名・40代)。それでも「SDGs」について扱うのは、会社としての決定があるからだと、いまの状況を分析した自論を展開する。
「この流れは国が決めたことですからね。当然、大メディアである我が社の社長や役員も旗振り役に加わっていて、トップダウンでネタが降りてくる。これまでもそういうことはあって、いわゆる『ゼヒモノ』と言われるテーマです。普通は、世の中で話題になっているとか、関心が集まっていることが、そのテーマを取り上げるかどうかにおいては大きな判断材料となるのですが、ゼヒモノとなると、そういう実態がなくても取り上げなければいけない。上司の機嫌取りのため、実績作りのために無理やり企画をねじ込む、なんてことも」(齋藤氏)