コロナ禍で世界中が終わりの見えない闇に包まれる中、さわやかな歌声と軽快なダンスパフォーマンス、圧倒的なビジュアルで、ひと筋の光を照らした韓国出身の人気アーティストBTS。
2021年は「第63回グラミー賞」でアジア人アーティストとしては初のノミネートとなり、全世界に向けてリリースした『Butter』はビルボードシングルチャートで10週連続第1位を獲得。9月には「第76回国連総会」に参加し3年連続でスピーチし、国連施設で初パフォーマンスするという快挙も成し遂げた。さらに11月からは、米・ロサンゼルスで約2年ぶりとなる観客を入れてのコンサートが大成功。
そして2022年、4月に開催が延期された「第64回グラミー賞」では、2年連続で「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞」の候補にノミネートされ、今年こそは悲願のグラミー獲得となるか注目されている。その目覚ましい活躍と成長、勢いは世界中の誰もが認めるところだ。
そんな彼らの2013年の韓国デビューイベントから、日本でのツアー、米LA・ローズボウルスタジアムや英ロンドン・ウェンブリースタジアムでの公演など、伝説となった数々のコンサート演出を手掛けてきた1人の名プロデューサーがいる。韓国コンサート演出専門チーム<PLAN A(プランエー)>代表のキム・サンウク氏(通称“ナイスなアヒル”PD)だ。
メンバー全員がソウル以外の地方都市の出身というBTSの7人を、世界的なアーティストへと押し上げるまでには、舞台裏でさまざまなトライ&エラーがあったようだ。
キム氏がコンサートに捧げてきた半生を綴った『K-POP時代を航海するコンサート演出記』。韓国で話題になっているこの書籍(日本語版も昨年11月に発売)では、「世界を熱狂させたK-POPグループ」が上りつめていく舞台裏が記録されている。
たとえば、韓国でマスコミだけを集めて行うデビューショーケースイベント。通常なら20曲程度の楽曲を4時間ほどのリハーサルをして行う。それが、2013年に行われたBTSのデビューイベントのリハーサルは3曲の披露曲に対し、前日7時間、当日2時間、2日間で9時間もかけて行ったという。当時はほぼ無名だった小さな所属事務所が、本気で世に送り出した7人だったのだ。
キム氏は、そのデビューイベント当時のメンバー7人それぞれの印象も克明に記録している。