これまでの変異株と比べても桁違いの感染力を持つオミクロン株。世界各国は感染拡大と戦いつつ「ウィズコロナ」の道を模索しているが、それに抗い「ゼロコロナ」に固執する国がある。冬季北京五輪を目前に控えた中国だ。ジャーナリストの西谷格氏がレポートする。【前後編の後編】
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五輪と言えば政府の威信をかけた国家イベント。現地はさぞやお祭りムードかと思いきや、そうとも言えない。北京在住の日本人男性が言う。
「街中に五輪マスコットのオブジェをよく見かけるようになり、ケンタッキーの紙袋も五輪仕様になっています。スキーやスケートに関する施設も増えました。とはいえ、国民的スターと言えるような出場選手はスキーの谷愛凌ぐらいで、盛り上がりはまあまあという感じです」
北京市内では開閉会式やスケート競技などが行なわれる予定。だが、「鳥の巣」や「水立方」などの競技施設が次々と建設されて国家ぐるみで熱気に沸いた2008年の夏季五輪とは大きく様相が異なる。新設される競技場はほとんどなく、スキー競技の大半は北京から約200キロ離れた河北省張家口市などで実施される。中国ではもともと、ウィンタースポーツへの関心も薄い。
「北京で感染者が出てしまったので、五輪よりも春節に帰省できるかどうかのほうが、関心が高いですね」(日本人駐在員)
もはや中国にとって、国民の盛り上がりよりも大切なのはコロナを抑えて無事に大会を終えること。1月17日には駐フランス中国大使が現地メディアの取材に答え、政府のスタンスを示した。
「中国は五輪の準備が完璧にできており、世界各国のアスリートたちの参加を歓迎している。世界に向けて素晴らしい卓越した冬季五輪をお見せしたい」
懸念されるのは、大会開催中の北京のロックダウン。万が一にもないと言えるのだろうか。大使は巧みに明言を避けた。
「今のところ北京での症例はわずか1例で、感染源も容易に特定できており、まったく心配する必要はない。大会中に北京のコロナ情勢が深刻化することはないと確信している」