初場所後、2年に一度の日本相撲協会の理事選がある。理事10人、副理事3人が定員で、立候補締め切りは1月27日だ。もともと協会の理事選は、5つある一門が候補を事前調整して無投票となるのが慣例だったが、2010年に貴乃花親方が一門を割って立候補する“貴の乱”で当選して以降、候補者が定員を上回って投票になることが続いていた。それが、貴乃花親方が協会幹部と対立の末に2018年に退職すると、2020年の理事選は6期ぶりの無投票となった。今回も各一門の事前調整が進められてきた。
ただ、「今回の理事改選は執行部の“世代交代”の第一弾になる」(若手親方)と注目されている。
現職理事では二所ノ関一門の尾車親方(元大関・琴風、64)、時津風一門の鏡山親方(元関脇・多賀竜、63)、伊勢ヶ濱一門の高島親方(元関脇・高望山、64)が定年のために理事を退く。とりわけ、協会ナンバー2の事業部長を務める尾車親方の理事退任は、大きなインパクトを持つ。
そこで注目すべきは、「二所ノ関」襲名が承認された元横綱・稀勢の里の荒磯親方(35)が、どのように関わるのかだ。現役時代のイメージがよい稀勢の里には、協会を背負って立たせたいという動きが加速していると言われている。
「同じ二所ノ関一門から後釜が選ばれるが、さすがに引退してまだ3年の稀勢の里をいきなり理事にするのは、一門の他の親方衆の手前、憚られる。今回、二所ノ関一門は現職理事の芝田山親方(元横綱・大乃国、59)、花籠親方(元関脇・大寿山、62)に加え、新たに佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若、53)が理事となる調整がつけられた。
ただ、一門の看板を担う“二所ノ関親方”となった稀勢の里は、理事選後の職務分掌で要職に抜擢される見通し。現在は委員待遇年寄だが、理事選後には役員待遇委員となり、審判部副部長か巡業部副部長に起用されるのではないか」(前出・若手親方)
100人あまりいる協会の親方衆には「理事→副理事→役員待遇委員→委員……」といった序列があるが、委員待遇年寄から役員待遇委員となれば、親方としての序列は現在の81番目から、20番前後に一気にジャンプアップすることになる。
「現在の理事は、今後数年で続々と定年を迎える。2年後の理事選で稀勢の里が理事になることを含め、世代交代は当然、急ピッチで進む」(同前)
たしかに理事の面々を見ると、八角理事長(元横綱・北勝海)は58歳、伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)は61歳と定年が視野に入ってくる年代だ。