94年ぶりの五輪3連覇。世界初の4回転半。団体戦初メダル。北京五輪の開幕が近づくにつれ、羽生結弦(27才)による記録ラッシュへの期待が高まっている。コロナ禍で開催される今大会は、ワクチン接種に伴う体への負担、換気作業に伴う待ち時間の発生など、競技以外での戦いも強いられるが、一方で悪い話ばかりではない。羽生は中国で圧倒的な人気を誇っているのだ。
「最大のライバルは、中国にルーツを持つアメリカ代表のネイサン・チェン選手(22才)ですが、中国国内の人気は圧倒的に羽生選手の方が高い。きっかけは2017年の世界選手権の表彰式で、3位の中国選手の国旗が裏表逆になっていたのを、1位の羽生選手が直したんです。実力者と認識されていましたが、この美談でさらに人気が上がりました」(中国在住ジャーナリスト)
中国の国営放送も連日羽生の話題を取り上げ、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で「羽生結弦」がトレンド入りすることも珍しくはない。中国で熱を帯びる羽生人気。呼応するように、羽生の闘争心も熱さを増している。
だが、いまの羽生は以前とは違った境地に至っている。羽生は五輪出場を決めた全日本選手権の翌日、NHKのインタビュー取材で、「4回転半を携えて、3連覇を狙う」と語っている。
しかし、遡ることわずか半年前、『Number』(2021年7月29日号)で水泳の池江璃花子(21才)と対談した際には、「自分が目標としているものがイコール『勝つ』じゃなくなっちゃったんです。勝つだけだったら、4回転半はいらない。4回転の種類を増やして、いい演技をコンスタントにできる方が絶対に勝てる」と、「4回転半」と「勝利」は別物ともとれる考えを語っていた。