日本相撲協会では、初場所のあとに行われる2年に一度の理事選をめぐり、様々な思惑が交錯している。「二所ノ関」襲名が決まった元横綱・稀勢の里の荒磯親方(35)に、現役時代のイメージのよさを生かして、将来の理事長にしようという動きがある。
次の理事選でいきなり理事とはいかないが、職務分掌で要職に抜擢し、スピード出世となるはずだと言われている。協会の主要派閥がそうした青写真を描くことを急ぐ背景には、元横綱・白鵬の間垣親方(36)の存在があるとみていい。
現在は宮城野部屋付きの親方だが、師匠の宮城野親方(元前頭・竹葉山)は今年8月に65歳の定年を迎える。再雇用で70歳まで協会に残るにしても、「間垣」と「宮城野」を交換して、元・白鵬が宮城野部屋を継承するとみられている。
「協会執行部は、部屋持ち親方となった白鵬が“第2の貴乃花”になるのが恐いのでしょう。白鵬を慕う力士や若手親方は多く、“協会はそのうち白鵬派と稀勢の里派に二分される”といわれているほど。資金力も豊富。傍若無人な言動を続けた白鵬が実権を握ることを協会執行部は警戒しており、わざわざ引退時に親方になる条件として、協会の指示に従うといった内容の誓約書に署名までさせました」(ベテラン記者)
“包囲網”を敷かれているだけに、好き放題の振る舞いは難しそうだ。しかも、宮城野部屋が所属する伊勢ヶ濱一門は、角界に5つある一門のなかでも最も多くの部屋を抱える二所ノ関一門と比べれば“弱小派閥”である。
「一門トップの伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士、61)は、日馬富士と照ノ富士という2横綱に加え、安美錦(現・安治川親方、43)ら個性豊かな力士を育てた実績があるのに、理事長の座には届かない。弱小一門の悲哀です。一門から出せる理事は2人が限界で、伊勢ヶ濱親方が退いた後の世代では、安治川親方、元大関・魁皇(49)の浅香山親方が理事候補で、白鵬はその次くらいの位置づけでしょう」(協会関係者)
角界では現役時代の最高位が引退後の処遇に影響するとされ、元横綱、元大関が理事や副理事になることも多いが、その一方で、元横綱の武蔵丸(現・武蔵川親方、50)や元大関の栃東(現・玉ノ井親方、45)、出島(現・大鳴戸親方、47)、千代大海(現・九重親方、45)、雅山(現・二子山親方、44)、琴欧洲(現・鳴戸親方、38)などは、出世はしていない。
「一門内の人間関係のなかで、どうのし上がっていくかで左右される部分も大きいのです」(同前)