昨今、テレビ局が力を入れているのが配信事業だ。民放キー局5社らが出資して制作したネット配信サイト『TVer』は放送終了後、一定期間(多くは1週間)、無料でいつでもテレビ番組が観られる。昨年からは日本テレビでテレビ放送との同時配信が開始され、今年度中には民放キー局5社すべてで開始予定だ。NHKも『NHKプラス』で見逃し配信とネット同時配信を開始している。
毛利嘉孝・東京藝術大学大学院教授(メディア研究)が語る。
「ネット配信はコア層にテレビのコンテンツに触れてもらうために始めた取り組みです。いまの学生と話していると、決まった時間にテレビを観るという習慣は乏しく、観たい時に観るのが当たり前。番組も観たくないコーナーはスキップして、倍速再生で視聴しています」
ネット配信と親和性が高いのがドラマだ。1月10日に放送を開始した月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)の第1話は、世帯視聴率は13.6%と突出して高い数字ではないが、『TVer』などでの見逃し配信が歴代最高となる424万再生を記録した。ほかにも同サイトのランキングにはドラマがズラリと並ぶ。
最近ではネットフリックスやHuluなどの有料動画配信サービスでもドラマを配信しており、高視聴率を記録した『日本沈没―希望のひと―』(TBS系)はネットフリックスで放送同日に配信された。
いまや地上波放送はドラマを視聴させる一手段に過ぎないのだ。フジ局員はこう息を巻く。
「うちは昨年に月曜10時にドラマ枠を新設したが、4月からは水曜10時枠にもドラマを増やします。上層部は“ドラマは金を稼げる”と息巻いています。『通常放送でのCM収入』『ネットの見逃し配信での広告収入』『DVDなどのパッケージ販売』と、3段階で収益が期待できますから」
※週刊ポスト2022年2月4日号