テレビ番組が変わると、「現場」も変わってくる。かつて多くの若者が憧れたテレビマンたちの姿は、そこにはないようだ──。
昨年末、日本テレビでは「AD(アシスタントディレクター)」という呼び方を廃止し、「YD(ヤングディレクター)」と呼ぶことになったという。現場でコキ使われる“下っ端”扱いがようやく改善される──と見る向きもあるが、実情は少し違うようだ。
「今は働き方改革の流れもあり、ADが徹夜続きなんてところも見なくなりました。もはやテレビマンになりたいなんて若者は絶滅危惧種。制作会社が募集してもADのなり手はおらず、テレビ制作志望というわけでもない人材ばかり。『おいAD!』なんて呼ぶこともなく、『ADさん』や名前で呼ぶし、終電までには帰らせるよう配慮しています。コピーなどの雑用も、極力ディレクターが自分でやっていますよ」(制作会社幹部)
テレビ業界を目指す者も少なければ、見切りをつけるテレビマンもいる。
「配信に活路を見出し、TVerの見逃し配信再生数などをアピールしていますが、HuluやParaviなど乱立していて先行きはまだ不透明。テレビ局員といえば高給取りでしたが、イケイケだったフジでも今の20代後半は残業代込みで1000万円に届かないと言います。給料が上がる気配もないのでAmazonプライムビデオはじめ配信系に転職する局員が増えています」(フジ幹部)
働き方だけでなく、仕事内容も変化した。前出の制作会社幹部が言う。
「ドラマでは、どの局も上層部からシリーズものを求められます。劇場版が公開中のフジテレビの『コンフィデンスマンJP』はその成功例で、映画版や配信など2次収入を狙いやすい。一方、支持を得ていたとは言い難い『ラジエーションハウス』の第2シーズンや劇場版を作ったのもそうした思惑があった。スタッフや演者の心が折れかけていても、無理してシリーズ化させるような作り方を強いられるのです」
ドラマ以外の現場はさらに厳しい環境だという。
「情報番組のほとんどが制作費も労力も抑えろという状況です。番組で独自映像を撮ることは激減し、報道局の素材を局内で使い回し。番組で取り扱うネタも、『ネットの検索ワードランキング』をもとにしたり、SNSでバズるものを重視したりと、地上波放送のプライドはなく、すっかりネットに迎合しています」(情報番組ディレクター)