薬には必ず「副作用」がある。数値を下げるための薬が、ほかの数値を上げる原因に──。あなたも、そんな悪循環に陥っているかもしれない。
厚労省の統計(2021年)によると、「7種類以上の薬を処方されている人」は75歳以上では24.2%にのぼり、日本でも多くの患者が「多剤併用」状態にある。
そして多剤併用は、副作用リスクを高める懸念もある。東京大学の研究によると、6種類以上の薬を処方されている高齢患者は、5種類以下の高齢患者に比べて、副作用が起きる確率が10~15%上昇するという。
たとえば服用により「コレステロール値を上げるリスクがある薬」も数多い。降圧剤や糖尿病治療薬など、生活習慣病の薬が並んでいる。
血中コレステロールの正常値は60~119mg/dlとされ、LDLコレステロール値が140mg/dlを超えると「高コレステロール血症」と診断される。動脈硬化を引き起こす恐れがあるため、日本動脈硬化学会は「数値は低いほどいい」との見解を示している。
食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が原因で高血圧や高血糖、脂質異常症を併発し、これらの治療薬を併用するケースは十分に考えられる。
また、プロトンポンプ阻害薬などの胃腸薬にも、副作用として「総コレステロールの上昇」が記載されるものがある。
「はっきりした作用機序は不明ですが、胃腸薬の服用で胃酸の濃度が変わり、脂質の吸収に影響が生じることでコレステロール値が上昇する可能性がある」(銀座薬局代表・長澤育弘薬剤師)
新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医師や長澤氏によると、薬剤により血糖値やコレステロール値が上昇するメカニズムは不明なことが多いという。だが、そもそも多剤併用ゆえに分かりにくくなっている側面も指摘できる。
「医師や薬剤師から数値の上昇リスクについて説明される機会は少ないでしょう。しかし、生活習慣病の薬は毎日服用するもの。かかりつけ医や主治医が、日頃から数値の異常を確認してくれるかが重要です」(岡田医師)
様々な健康リスクを生む恐れのある「多剤併用」。健診などで数値が悪化した場合、「副作用の可能性」を考慮して、専門家に相談する必要がある。
※週刊ポスト2022年2月4日号