体験取材を得意とする女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、世の中の気になったことについて持論を展開する。今回は映画『ハウス・オブ・グッチ』にまつわるあれこれについて綴ります。
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レディー・ガガ主演の映画『ハウス・オブ・グッチ』を見てきた。
この前、映画を見たのは昨年2月、役所広司主演の『すばらしき世界』だから、約1年ぶりだ。私にしてみれば1年に2本はよく見た方。その前の10年は1本も見ていないもの。
その間に、映画の環境は激変していたのよ。チケットを買うだけで四苦八苦。どこで上映しているか調べて足を運べばいいってもんじゃないの。
前回は、東京・渋谷の『ヒューマントラストシネマ渋谷』というシネコンでの上映だったんだけど、ネットで調べたら、チケットは前もってネットで買えというの。
見る映画の時間と座席を決めて、クレジットカードの番号を入力して支払いを済ませるまではどうにかなった。ところがその先がわからない。お金を払ったはいいけれど、それをどう証明するのか。
たったいま入力したものを再確認したいと思うものの、その再確認はどうするの! タブレットと何時間も格闘した挙句、答えが見つからないまま、ええい、映画館に行けばなんとかなると見切り発車よ。クレジットカードでお金を払ったはいいけれど、「証明できなかったら仕方ないですね。もう一度買い直してください」と映画館で言われたらどうしよう……。
実は私、7年前に大手の旅サイトから海外のホテルを予約したときに、2度払いさせられたことがある。だから、スマホとタブレット、最近ではアップルウォッチまで買って新しがっているものの、人の顔を見ないでのお金のやり取りは根っこのところで信用していないんだわ。
正解は、支払いと同時にネット上に表れた長い数字(予約番号)をスクリーンショットでスマホに記憶させるか書き留めるかして、映画館の自動券売機に入力して発券すればいい、と案内のお姉さんから聞かされて納得したんだけど、ここまでわかるのに何回、心が折れたか。
そんなことがあったのに、このオバさん、1年前のことなど覚えちゃいない。で、今度もまた新宿のシネコン、新宿バルト9の券売機の前で固まってるんだから世話はない。スイスイと買い進めている若いコたちがエラく見えて仕方がなかったわ。ただ、何ごとも経験だね。前回のような恐怖心はもうなくて、予約番号はスルー。見たい映画、座りたい席、支払い方法を選んで「次へ」「次へ」と進んでいったらちゃんと印字されたチケットが出てきたのよ。
とはいえ、映画業界はこの券売システムを導入したとき、中高年の挫折は考えなかったのかしら。ネットでくじけて、「ああ、もう映画なんかいい」と恨みを残した人がいないとは思えないんだけどね。「券売機の横に案内人が待機しています」くらいしてくれてもいいじゃない!と小さな声でブツクサ言いながらエレベーターで上った私。