物語が走り始め、そろそろ評価が定まってくるタイミングである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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ドラマ『ゴシップ#彼女が知りたい本当の〇〇』(フジテレビ系木曜午後10時)で主演をつとめている黒木華さん。黒木さんといえば、一見古風な顔立ちでほんわかした温かな雰囲気が漂うけれど、今回の主人公・瀬古凛々子という役はそのイメージを打破するようなシャープな人物像です。
いつもダークな色調の装いで表情も抑えぶつきらぼうでとっつきにくい。が、内面は真実を追究する熱血者。困難な局面を打開し「カンフルNEWS」の閉鎖危機を救うべくPVアップに奮闘する凛々子。まさしくカンフル剤となって編集長に抜擢される。
「まっすぐに生きている人はかっこいいなと思います。自分に素直に、嘘のない生き方をしている人は、芯があって美しい。日々の生活や内面は、目や表情に表れると思うんです。自分もなるべくそうでありたい」(「FRaU」2022年1月号)と語る黒木さんですが、今回のドラマの主人公とも重なる部分がありそう。
ドラマを見て拍手喝采、スカッとしたいのですが……どこかモヤモヤしてしまうのはいったいなぜでしょうか?
ネット上の盛り上がり具合も今一つ。ドラマの話題自体が「PV」を稼ぎ出せていないとすればあまりにも残念。ドラマの設定に課題があるのか? それともキャラクター造形でしょうか?
「空気が読めないが洞察力が鋭い」という設定の凛々子。取材をしながら事実をつかみ取っていくが、それは果たして正義感からなのか、それともPVを獲得しようとする野心からか。このドラマはマスコミのあり方を批評しようとしているのか、ネットニュースという仕事の現場を紹介しているのか、あるいは根津(溝端淳平)との恋愛か、働く女性の自己実現と格闘なのか。今のところ、いずれの要素も中途半端な印象に留まっています。
はてさて、凛々子という人物を通して描こうとしていることはいったい何か? それが知りたい。
もしお仕事ドラマだとすると……肝心なところでリアリティに欠けるのが残念。例えば離婚した俳優が出演する舞台の会見場で、いきなり「お2人に性的な結び付きはいつまであったのでしょうか?」と質問する記者が現実にいるかどうか。仕事としてそれが成り立つか。
凛々子はその質問の根拠として鞄から分厚い辞書を取り出す。
「『夫婦とは人格的、情緒的、性的に結び付きを持ち社会生活の上で協力する親密な関係の事』と書かれた辞書がありますが……」と語るあたりも不可思議です。
今やスマホの検索で様々な日本語辞典から百科辞典まで言葉の定義も含めて調べることができる時代。記者は情報を扱うプロであり、取材で駆け回る人がわざわざ分厚い辞書を持ち歩くのも謎。ドラマなのでリアリティがすべてではないとしても、細かな点でエンタメとして白けてしまっては元も子もない。