「パラリンピックに出るのが目標なんです」
5年前、そう言っていたのは、車いすラグビー選手の長谷川勇基さん(29)。
東京パラリンピック2020で銅メダルを獲得した日本代表メンバーにスタメンで出場している彼の勇姿をテレビで観戦し、「有言実行だったね!」と感慨深いものがあった。
筆者が長谷川選手を知ったのは、2014年9月、所沢にある体育館へ車いすラグビーの取材に行ったときだ。何チームかが集まっての公開試合や、車いすに乗るラグビー体験会が開かれていた。
車いすラグビーは、車体同士が激しくぶつかり合うダイナミックさが魅力のひとつ。筋骨隆々のマッチョが多い中、ボール争いに絡まず集団から離れた場所でスイスイと車いすを漕いでいたのが長谷川選手だった。端整な顔立ちはアイドルのようで目をひく。一緒に取材に行ったスタッフと、「あの選手、かっこいいね」とチェックしていた。
SNSで追いかけていると、髪の色は赤かったり金髪だったり黒髪だったりと、よく変わる。ユニフォームの時は気づかなかったが、服装もかなりおしゃれで気を遣ってるスタイリッシュな青年だとわかった。
『Co-Co Life☆女子部』という障がいのある女性のためのフリーペーパーがある。その企画で、障がいのある“イケメン”を特集することになり、長谷川選手を紹介したのが2017年。
撮影時の私服はカラフルなセーターを着こなしていて、ワイルドな雰囲気。一方、その後の打ち上げでは、ワイシャツできちんとした真面目な感じ。どちらも似合っていたので、おしゃれですねと声をかけると、
「中学のとき、服がダサいと友達に言われて、高校からは気をつけるようになりました(笑い)」
と言う。そして、そのときに聞いたのが、冒頭の言葉だ。
17才でけがをして脊椎を損傷、車いすユーザーになった長谷川選手。16才のころまでは水球の選手で全国大会にも出場するほどの活躍をしていた。
「突然、将来の展望が失われ、その絶望や苦しみは計り知れなかったことだろう」などと私たちは想像しがちだ。しかし聞いてみると、意外なほどに淡々としていた。