学校法人きのくに子どもの村学園が運営する「南アルプス子どもの村小中学校」(山梨)に1年にわたり密着したほか、公立ながら同様に子どもの自主性を重んじる長野・伊那市立伊那小学校、そして東京・世田谷区立桜丘中学校を取材したドキュメンタリー映画『夢みる小学校』が、2月4日より公開される。それに先がけて行われた試写会では号泣する人が続出し、「見終わった瞬間、子どもがますます愛おしくなった」という声が多く聞かれた。
同映画の監督であるオオタヴィンさん(61才)と、映画にも登場する桜丘中学校で当時校長を務めていた西郷孝彦さん(67才)に、子どもにとって本当に必要で、いま取り戻すべきものは何かを聞いた。(前後編の前編)
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西郷:実は、コロナ禍よりも前から、小中学校が抱える問題は明らかでした。私は2020年3月末まで中学校の校長を務めていましたが、小学校から上がってくる子どもたちの多くに「好きなもの」がない。決められたことを守り、指示されたとおりに行う小学校教育で、自分の気持ちを出せなくなっているのでしょう。
オオタ:その子たちの気持ち、私にはよくわかります。実は小学校6年時の三者面談で、“きみは、普通中学は難しい”と先生から断言されたことがあるんです。なぜなら図工と国語以外に興味がなくて、その2科目は集中できるんですが、それ以外はまったくダメ。じっとしていられない、いまでいう多動症(ADHD)です。当時は多動という言葉はなく、劣等生と思われていたんです。
西郷:でも「映像」という好きなことを見つけたんですね。
オオタ:はい、そこに至るまで相当遠回りしました(笑い)。1作目の映画『いただきます1 みそをつくるこどもたち』が完成したのは57才のときですから。