学校法人きのくに子どもの村学園が運営する「南アルプス子どもの村小中学校」(山梨)に1年にわたり密着したほか、公立ながら同様に子どもの自主性を重んじる長野・伊那市立伊那小学校、そして東京・世田谷区立桜丘中学校を取材したドキュメンタリー映画『夢みる小学校』が、2月4日より公開される。それに先がけて行われた試写会では号泣する人が続出し、「見終わった瞬間、子どもがますます愛おしくなった」という声が多く聞かれた。
同映画の監督であるオオタヴィンさん(61才)と、映画にも登場する桜丘中学校で当時校長を務めていた西郷孝彦さん(67才)に、子どもにとって本当に必要で、いま取り戻すべきものは何かを聞いた。(前後編の後編)
公立も「校長の裁量」で素敵な学校に変えられる
──今回は、なぜ桜丘中学校も取り上げたのですか?
オオタ:「きのくに子どもの村学園(以下、子どもの村学園)」がいくらいい学校だといっても、全国5校で合計650人程度の子しか享受できない。悪い意味で「夢の学校」の話になってしまうと思ったんです。
公立にだっていい学校はあるはず。そう思って探しているうちにたどり着いたのが、「通知表、チャイム、時間割がない」ことで有名な、長野の伊那市立伊那小学校であり、西郷先生の桜丘中学校だったんです。
桜丘中は、公立なのに定期テストも制服も校則もない。「浴衣の日」には学校で浴衣を着ているし、ハロウィンには先生も生徒も仮装したまま授業を受けている。こんな中学に私も行きたかったなぁ(笑い)。西郷先生、よくああいう自由な中学校を実現しましたね。
西郷:私立校をゼロから立ち上げる方が大変なんです。お金もかかるし、人も集めなくちゃいけない。でも、公立校はもともと予算もあるし教員もいる。校長の裁量で、本当はいくらでも「子どものための学校」にできるんです。
オオタ:驚いたのは、初めて桜丘中学校の校長室に行ったとき、校長先生の椅子に座って男の子がエレキギターを弾いていたことです(笑い)。
西郷:ハハハハハハ。
オオタ:桜丘中のことを知ってもらって、他校の校長にもどんどん真似してほしいなぁ。そもそも校則をなくしてしまえば、子どもも先生も楽しいのに。