多くの時間を過ごす自宅の部屋の環境が健康に大きく影響するのは、感覚的にも理解できるだろう。例えば部屋の明るさは精神状態に多大な影響を与えるという。看護師で心理カウンセラーの大軒愛美さんが訪問したある家は、広い部屋の中心にポツンとベッドがあり、カーテンが固く閉じられていた。
「昼間なのに、夜のように暗くてひんやりした部屋でした。カーテンを閉め切っていると気持ちが沈み、どんどんマイナス思考になります。大切なのはカーテンを開けて太陽の光を取り入れること。自然光を浴びることで脳や気持ちが活性化します。介護を受けていても元気な人の部屋は、ベッドが窓際に近く、本人がカーテンを開けられることが多いです」(大軒さん)
ただし、暗いからといって過剰な光は避けるべきだ。社会福祉士でケアマネジャーの中村雅彦さんはいう。
「高齢になると視力が低下し、部屋が暗いと敷居の1cmの段差が見えず転ぶこともある。電気をつけると転倒リスクが減りますが、蛍光灯の光は刺激が強く、高齢者は精神的な不調を起こしやすい。段差の部分にだけ、蓄光シールを貼るといい」(中村さん)
光の反射にも意識を向けたい。建築家の佐川旭さんはこう語る。
「人が落ち着く反射率は、肌と同等か、それ以下とされています。ガラスや鏡、ステンレスなどが多い部屋は都会的でおしゃれな空間を演出できますが、目に光が入りすぎるので何時間もいると疲れてしまいます。畳や障子、木で構成された和室の方が反射率が低く、長時間居続けるには適しています」
家具や家電を置く際も、反射率の高いステンレス素材などはなるべく控えたい。
中間色のピンクで若々しく
あまり知られていないが、光だけでなく部屋の色も健康に影響する。
「色によって人間の筋肉は弛緩したり緊張したりします。筋肉が弛緩すると心もリラックスし、筋肉が緊張すると心も緊張したり興奮します。インテリア業界では、部屋の70%を占める床や壁、天井の色を『ベーシックカラー』、部屋の25%を占める家具や家電などを『コントロールカラー』、残り5%の照明などを『アクセントカラー』と呼びますが、ベーシックカラーとコントロールカラーの色により健康状態が変わります」