1月15日、大学入学共通テスト初日に東京大学本郷キャンパスの試験会場前で起きた刺傷事件が、テレビ界に思わぬ波紋を広げている。事件を起こした名古屋の進学校に通う少年が、かねて東大を目指しており、教師から「東大は無理」と言われたことから犯行に及んだことが明らかになると、行き過ぎた「東大信仰」への批判が文化人から相次いだ。なかでも標的になったのは、学歴ブランドを全面に押し出した番組作りをしているテレビ局である。
ジャーナリストの池上彰氏が1月24日付の日本経済新聞朝刊に寄せたコラムでは、「東大だけが人生ではない」ことを受験生たちへのメッセージとして伝えている。一方、民放のテレビ局を厳しく批判した。
〈指摘したいのは、最近の民放のクイズ番組の数々です。出演者のタレント一人ひとりの出身校が明記され、まるで「大学対抗戦」の様相を呈していたり、東大生がいかに物知りかを強調した番組だったり。そんな番組が増えてきたことにあきれていたのですが、こんな事件が起きてしまうのを見ると、黙ってはいられなくなりました。(中略)最近の傾向を見ると、「恥ずかしくないですか」と言いたくなります〉
この批判はネット上で大きな反響を呼び、コラムニストの小田嶋隆氏はツイッターで記事をリツイートしながら、〈ほんと「東大王」とか、作ってて恥ずかしくないのだろうかね〉と番組名まで挙げて辛辣なコメントを寄せた。
脳科学者・茂木健一郎氏も自身のブログで、〈日本の一部のテレビ局の、特定の大学生、特に東大だけを「スター」として扱うような演出方針は、青少年の心の成長に悪影響を与えるものとして議論されるべき時期が来ていると思う〉と指摘。学歴ブランドを活かした番組作りに逆風が吹いているのは間違いない。