1月28日の春のセンバツ甲子園出場校の発表で、聖隷クリストファー(静岡)が“まさかの落選”となったことが、注目を集めている。昨秋の東海大会で準優勝したにもかかわらず、東海地区選出の「2枠」から漏れたのだ。ノンフィクションライター・柳川悠二氏の単独インタビューに応じた聖隷クリストファーの上村敏正監督(64)は、選手たちにどう説明すればいいのか、苦悶の表情で思い悩んでいた。【前後編の後編。前編から読む】
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センバツへの出場校を決定する東海地区の選考委員は、大垣日大(岐阜2位)が2回戦で優勝候補に挙げられていた享栄(愛知1位)に勝ったことも代表選出の理由に挙げていた。だが、大垣日大対享栄が行われた10月31日に、東海地区の選考委員長である鬼嶋一司氏は、母校であり、監督を務めたこともある慶応大と、早稲田大との早慶戦を斎藤佑樹(元・北海道日本ハム)と共にテレビの生中継で解説していた。
もちろん、今年の東海地区の選考委員は8人おり、しかも10月31日の東海大会は2会場に別れて行われていた。選考委員ひとりが全試合を視察することはそもそも不可能だとしても、選考委員長を務める人物が東海大会の日に神宮球場にいたことにも首を傾げたくなる。
センバツの代表校に落選した聖隷クリストファーの上村敏正監督は単独インタビューに応じ、こう話す。
「(選考の判断に)うちの1、2回戦は参考にならなかったのでしょうか。2回戦では好投手のいる中京(岐阜1位)に勝利しました。1回戦ではバッティングの良い津田学園(三重3位)にも勝つことができました」
東海地区におけるセンバツへの出場枠は「2」。この少なさについても、これまで議論されてきた。参加校は東海4県で429校、中国・四国をあわせた9県で428校とほぼ同数ながら、中四国の代表枠は「5」だ。選考委員長である鬼嶋氏は選考委員会総会後にその可能性を否定したものの、限られた東海地区の2枠に静岡から2校が入ることを選考委員が避け、地域性に配慮したのではないかという疑念は残る。その点について、上村監督はこう続ける。
「(できるだけ多くの都道府県の学校が出場するように配慮する)地域性も当然考えられたと思われますが、それよりも、“静岡の2校、特に本校では甲子園では勝てない”という判断だったのではないでしょうか。愛知の中京大中京や東邦、岐阜の県立岐阜商業といった名門が今年の代表校には含まれていません。その理由は、やはりコロナ禍にある。コロナで満足のいく練習ができておらず、強豪と言われるようなチームが県大会などで敗れる番狂わせが多かったですから。うちは“たまたま”東海大会で準優勝することができたのかもしれない。でも、たまたまがあるのが野球ではないですか?」