新型コロナウイルス・オミクロン株の猛威が止まらない。全国の感染者数は連日、過去最高を更新し、1月末には1日8万人を超えた。オミクロンは爆発的な感染力を持つ一方、鼻やのどなど呼吸器の感染症を誘発するだけで、肺までは侵入しにくく、ほとんどが軽症にとどまるといわれる。専門家のなかからも「オミクロンはただの風邪」という声も聞かれる。実際、東京都の病床使用率は2月1日時点で、緊急事態宣言を検討する目安「50%」を超えたが、入院患者の90%以上を軽症者が占め、重症病床使用率は5.5%にとどまる。デルタ株が主流だった昨年8月、入院患者の70%が中等症以上だったこととは対照的な状況だ。
だが、ほとんどが軽症だからといって安心してはいけない。それでも重症者はじわじわと増えている。
1月29日、全国の重症者が734人に達したと報じられた。重症者が700人を超えるのは昨年10月1日以来、およそ4か月ぶり。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが指摘する。
「確かにオミクロンはデルタより症状は軽い傾向がありますが、感染者はデルタよりもはるかに多いので、一定の割合で重症者が発生するのは避けられません。
実際、1月初めに1日の感染者が100万人を超えたアメリカは、オミクロンの死者数がデルタを上回りました。オミクロンはあまりに感染の広がりが速すぎて、感染対策に熱心に気を配っている人にも容赦ない。『感染したら重症化しやすい人』までかかっていて、非常に危険です」
どうせ重症化しないとタカをくくっていると、とんでもないしっぺ返しを食うことになる。
米疾病対策センター(CDC)のデータでは、オミクロンによる死者の75%近くが65才以上の「高齢者」だった。
ワクチンを2回接種済みの都内在住の女性・Aさん(85才)は、利用していたデイサービスの仲間が感染した。AさんもPCR検査で陽性反応が出たが、無症状なのでひとまず自宅で療養。ところが、その後に異変が生じた。