ライフ

終生免疫獲得も見込める「国産生ワクチン」の懸念は開発予算

「国産生ワクチン」の開発は進行中(イラスト/いかわ やすとし)

「国産生ワクチン」の開発は進行中(イラスト/いかわ やすとし)

 新型コロナに対するmRNAワクチンは時間の経過で中和抗体が減少する。そこで現在、日本では天然痘ワクチンに使用されていたワクシニアウイルスにコロナウイルスのスパイクタンパクを組み換えた生ワクチンの開発が進行している。1回の接種で長期にわたって効果が続き、また細胞性免疫なので変異株にも効果が期待できる。来春、ヒトへの臨床治験が開始される予定だ。

 新型コロナはオミクロン株の影響で再拡大。承認済みワクチンのオミクロン株に対する効果は30分の1か、50分の1程度ともいわれ、さらに一度感染しても、1、2年と比較的短期間で免疫が低下・消失するので、周期的に感染拡大を繰り返す。そのため次々に登場する変異株に対しても、効果が見込めるワクチンの開発が急がれている。

 そんな状況の中、日本では1回の接種で長期間の効果が期待でき、終生免疫獲得も見込めるワクチンとしてワクシニアウイルスをベクター(運び屋)にした新型コロナワクチンの開発が進行中だ。

 開発を担当している、東京都医学総合研究所の小原道法特別客員研究員に聞いた。

「ワクシニアウイルスを利用したワクチンの代表的なものは天然痘ワクチンです。200年以上の歴史があり、幼少期に1回接種すれば、その効果は一生続きます。現在、1961年に日本で開発されたワクシニアウイルスを大幅に弱毒化したDIs株がベクターとして使用されています。この株は安全性が確立されており、これに新型コロナのスパイクタンパクの遺伝子を組み換えた生ワクチンを開発しました」

 つまり、DIs株に遺伝子組み換え技術で新型コロナウイルスのスパイクタンパクの遺伝子を組み入れる。それをトリ由来の細胞を入れた培養タンクで培養、生ワクチンを作成する。以前の鶏卵での培養に比べ、細胞培養を行なうことで、より安全性が高くなり、製造コントロールも容易になっている。

 その開発した新型コロナウイルスワクチンをマウスに投与して攻撃感染させると投与1週間目に中和抗体が作られ、細胞性免疫も獲得、接種した全ての個体が肺炎を起こさなかった。また滋賀医科大学の協力で、カニクイザルにもワクチンを接種した結果、ワクチン接種群では肺内の新型コロナウイルスの増殖が5万分の1以下に減少、感染拡大が抑制された。これは感染しても、ウイルスを排除できることを示唆する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン