次々と姿を変えて変異種を生み出している新型コロナウイルスには、ギリシャ文字のアルファベットがつけられている。現在は15番目のオミクロンの名をつけられた変異種が猛威をふるっているが、それにどう対応するかについてSNSを中心に、二極化した議論どころか激しい罵倒合戦まで起きている。子供がスポーツに取り組んでいる親達のあいだで顕著になっている二極化と分断について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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新型コロナウイルスの「オミクロン型」が感染の主役となってから新規感染者数が激増。東京都では1日の新規感染者が1.5万人に達し、病床使用率が50%を超えてしまった。首都圏にいると、その数字よりも実際に身近なところで濃厚接触者や感染者が出ていることに、爆発的な感染拡大を痛感しているという人も多いだろう。今や感染力の「強さ」については誰もが認めるところだ。だが、どう対応するかについての考え方ははっきりと二分されているようである。とくに首都圏在住者の間では、「何が起こるかわからないので注意すべき」だと感染者激増への警戒を強めるべきだという人たちと、重症化するリスクは低いと言われているのだから「オミクロンは単なる風邪」と、議論が進められている新たな「自粛」に反発する人がいる。
コロナ対応についての意見によって世の中が二分され、現実の対応について硬直化した言説ばかりが飛び交っているために、やり場のない気持ちを抱えている、という人も少なくない。
勝ち進むんじゃなかった
「こんなことなら勝ち進むんじゃなかった、そう言って子供が項垂れているのを見ると、親としての無力感を感じるしかないんです」
こう肩を落とすのは、球技スポーツに打ち込む小学6年生の父親で、千葉県在住の齋藤匡さん(仮名・40代)。一月に控えていた小学生としての最後の試合では、優勝も狙えるポジションにいて、練習にも力が入っていた息子。しかし、小学校内で複数の新型コロナウイルス感染者が出たことで学校は休校に。試合は休校期間に開催が予定されていたため、出場辞退を余儀なくされた。
「もちろん、私だって感染は怖いし、息子はワクチンも打っていません。しかし、小学生として最後の大会に向け、子供達は頑張ってきました。それを『仕方ないね』で出場辞退なんて納得できません。インフルエンザみたいなものではないか、とも言われていますが、本当にこの選択が正しかったのか」(齋藤さん)
そんな悶々とした気持ちを抱いていた齋藤さんだが、同じような思いの親が他にもいるのではないかと思いSNSやネットの掲示板を見てチェックした。出場できないという状況をひっくり返したい、というわけではない。ただ、やりきれない気持ちを共有できるかと思っていたのに、書かれている内容に愕然とさせられた。そこには、齋藤さんと同じような思いの親がいるにはいたが、お互いの居住地や、コロナ期間の練習頻度などを巡り、罵声の応酬が展開されていたのであった。
「私は比較的都心に近いところに住んでおり、感染者数もそれなりに多いのですが、だから、私の住むエリアの学校は全て辞退しろ、という書き込みが複数ありました。逆に、私と同じ地域に住んでいると思われる方が、田舎のチームはコロナ中も自粛せず練習をしていたので強いのは当たり前で卑怯、と反論していました」(齋藤さん)