スポーツ

スポーツに励む子供たちが、大人の横暴なコロナ対応に振り回されるのは不憫だ

「夏季東西東京都高等学校野球大会」の試合間に、新型コロナウイルス感染防止のため、ベンチを消毒する球場スタッフ。2020年7月(時事通信フォト)

「夏季東西東京都高等学校野球大会」の試合間に、新型コロナウイルス感染防止のため、ベンチを消毒する球場スタッフ。2020年7月(時事通信フォト)

 次々と姿を変えて変異種を生み出している新型コロナウイルスには、ギリシャ文字のアルファベットがつけられている。現在は15番目のオミクロンの名をつけられた変異種が猛威をふるっているが、それにどう対応するかについてSNSを中心に、二極化した議論どころか激しい罵倒合戦まで起きている。子供がスポーツに取り組んでいる親達のあいだで顕著になっている二極化と分断について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの「オミクロン型」が感染の主役となってから新規感染者数が激増。東京都では1日の新規感染者が1.5万人に達し、病床使用率が50%を超えてしまった。首都圏にいると、その数字よりも実際に身近なところで濃厚接触者や感染者が出ていることに、爆発的な感染拡大を痛感しているという人も多いだろう。今や感染力の「強さ」については誰もが認めるところだ。だが、どう対応するかについての考え方ははっきりと二分されているようである。とくに首都圏在住者の間では、「何が起こるかわからないので注意すべき」だと感染者激増への警戒を強めるべきだという人たちと、重症化するリスクは低いと言われているのだから「オミクロンは単なる風邪」と、議論が進められている新たな「自粛」に反発する人がいる。

 コロナ対応についての意見によって世の中が二分され、現実の対応について硬直化した言説ばかりが飛び交っているために、やり場のない気持ちを抱えている、という人も少なくない。

勝ち進むんじゃなかった

「こんなことなら勝ち進むんじゃなかった、そう言って子供が項垂れているのを見ると、親としての無力感を感じるしかないんです」

 こう肩を落とすのは、球技スポーツに打ち込む小学6年生の父親で、千葉県在住の齋藤匡さん(仮名・40代)。一月に控えていた小学生としての最後の試合では、優勝も狙えるポジションにいて、練習にも力が入っていた息子。しかし、小学校内で複数の新型コロナウイルス感染者が出たことで学校は休校に。試合は休校期間に開催が予定されていたため、出場辞退を余儀なくされた。

「もちろん、私だって感染は怖いし、息子はワクチンも打っていません。しかし、小学生として最後の大会に向け、子供達は頑張ってきました。それを『仕方ないね』で出場辞退なんて納得できません。インフルエンザみたいなものではないか、とも言われていますが、本当にこの選択が正しかったのか」(齋藤さん)

 そんな悶々とした気持ちを抱いていた齋藤さんだが、同じような思いの親が他にもいるのではないかと思いSNSやネットの掲示板を見てチェックした。出場できないという状況をひっくり返したい、というわけではない。ただ、やりきれない気持ちを共有できるかと思っていたのに、書かれている内容に愕然とさせられた。そこには、齋藤さんと同じような思いの親がいるにはいたが、お互いの居住地や、コロナ期間の練習頻度などを巡り、罵声の応酬が展開されていたのであった。

「私は比較的都心に近いところに住んでおり、感染者数もそれなりに多いのですが、だから、私の住むエリアの学校は全て辞退しろ、という書き込みが複数ありました。逆に、私と同じ地域に住んでいると思われる方が、田舎のチームはコロナ中も自粛せず練習をしていたので強いのは当たり前で卑怯、と反論していました」(齋藤さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
プーチンと面会で話題の安倍昭恵夫人 トー横キッズから「小池百合子」に間違われていた!
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン