臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ORICON NEWSが発表した「第14回好きな司会者ランキング」で1位を獲得したマツコ・デラックスについて。
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今ではマツコ・デラックスが“招き猫”のように見えてくる。彼女(?)を初めてテレビで見たのは、TOKYO MXの情報番組『5時に夢中』。隣に島村和歌子さんが座っていた覚えがある。その時のインパクトは大きかった。その巨漢と女装姿が衝撃的過ぎて、話している言葉など耳に入らなかったものだ。おそらく2005~2006年ぐらいのことだと思うが、今ではその巨体から滲み出る“圧”がどっしりした存在感や安定感に変わり、ふくよかな丸く可愛い招き猫みたいな感じがする。
だから人気も招けば、レギュラー番組も視聴率も招いてくる。「第14回好きな司会者ランキング」では1位を獲得し、現在3連覇中。通算では4回目の1位獲得というが、その人気は少なくとも7~8年以上前から衰え知らずだ。自分の名前を冠したいくつものレギュラー番組でのMCぶりはどれも高評価。ゴールデンタイムから深夜にかけての番組なら、「今やテレビで見ない日はない!」という売れっ子によく使われる枕詞が素直に使えるほどである。
ネットでは、その人気の理由を分析した記事もよく見かける。博識で番組やパートナーごとに柔軟に対応でき、ズケズケとした物言いながら間違ったことは言わず、ズバっと確信をつきながらも優しさと毒舌のバランスが絶妙だ。視聴者目線でツッコミを入れれば、視聴者の意見や感情も代弁する。それを目にする度に、どれもその通りだと思わされる。
マツコさんは、聞き上手という以上に話させ上手だ。それも、「今ここだから聞ける」という臨場感を話し手や視聴者に感じさせるのが上手い。例えば「ああ」という言い方だけでも「あ―」「あぁ~」「あっ!」「ああぁ」と何通りもあり、そこには驚きやら納得やらがっかり感やら、さまざまな感情が乗っかっていて、相手や話の内容に合わせて使い分けられている。だから、たった一言の「ああ」といった単なる相槌のような言葉でも、マツコさんのその場の感覚や興味や関心の度合いが分かりやすく伝わってくる。