北朝鮮では2月1日の旧正月を迎えたが、2020年1月以来の新型コロナウイルス感染防止による中国との国境貿易停止の影響で、食糧の供給が十分ではなく、質素なものしか食べることができない状況が続いている。しかし、その一方で、朝鮮労働党幹部ら特権階級は中国と密貿易を行っており、日ごろ手に入らない豪華な食材などを輸入していたという。
密貿易による荷物の運搬を目にした北朝鮮側の市民らは「国民が苦しんでいるのに、一握りの特権階級の幹部たちは規則を破って、自分たちだけ特別扱い。庶民のことなど何も考えていない」などと不満を吐露しているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮は1月下旬、2年ぶりに中国の国境貿易を再開したものの、ようやく鉄道輸送が始まったばかりで、依然として食糧の多くが不足している。
しかし、ある市民はRFAに対して、「党幹部らの特権階級は家族や親族と旧正月を祝うために、通常の国境貿易とは違うルートで、中国から特別な食材を調達している」と明かした。
北朝鮮の秘密警察である国家安全省は直属の貿易商社に特別な許可を与えて、中国から食材の輸入を命じており、同省傘下の国境警備総局が用意した船舶を用いて、鴨緑江の対岸に位置する中国の港から物資を運搬しているという。
ある北朝鮮の商社関係者はRFAに対して「中国遼寧省の鴨緑江に面した港から食用油や砂糖、果物、野菜などを船積みし、対岸の北朝鮮の港まで運ぶ中小の船舶が両港を頻繁に行き来しており、北朝鮮側に運ばれた荷は徹底した検疫と消毒の手順を踏んでから陸揚げされ、直ちに貨車に載せられて各地に運ばれ、各地域の省庁の役人に贈答品として供給されるのです」と述べている。