先日他界した石原慎太郎氏はベストセラー『「NO」と言える日本』(共著)で対米自立を訴えたが、現在の日本が問われるのは、むしろ膨張する中国への姿勢である。果たして岸田首相は、中国に毅然ともの申せるのか。歴代政権を見続けてきた田原総一朗氏と、安倍政権で内閣官房参与を務めた藤井聡・京都大学大学院教授が激論を交わした。【全3回の第2回】
田原:バイデンは、米軍3000人規模の部隊にウクライナ有事に備えて派遣を命じたと報じられています。
藤井:そうですね。アメリカにとってウクライナ問題は台湾問題ほどには重視してはいないが、ここまで拗れると対応せざるをえなくなる。
しかし、トランプに比べるとバイデンは弱腰に映るし、日本の総理大臣も、中国に対して融和的な傾向が強い岸田さんに交代している。そんななかでウクライナ有事が始まってアメリカが巻き込まれ、北京冬季五輪が終わるというタイミングが重なる。もともと中国は北京五輪後を狙うんじゃないかと言われていましたが、悪条件が重なり合う“最悪の惑星直列”で、台湾有事が起きる可能性があります。
田原:ただ、私は藤井さんほど悲観的ではなくて、岸田さんは日本がやるべきことをよくわかっていると思います。習近平がもっとも信頼している日本の政治家は二階俊博さんで、その二階さんは中国に関しては自らの後継を林芳正さんだと考えている。岸田さんはそれをわかったうえで林さんを外務大臣に起用したわけです。岸田・二階・林の三者の間では、中国に対する具体的な対応策を検討している。
藤井:それを安倍(晋三)さん、高市(早苗)さんはどう考えるか。親中派の岸田・林ラインと、対中強硬派の安倍・高市ラインの対立構造というのは、自民党における伝統的な対立の構図で、両者ともにその主張には一理あると思っています。
外交というのは、常に喧嘩するわけでも常に融和するわけでもなく、是々非々で喧嘩も友好もすべきで、両者の一理を組み合わせることが最善の外交政策だと思います。米ソ冷戦時代も、アメリカとソ連の指導者の間でホットラインはつながっていました。
中国に対しては、今の共産党体制が100年、200年続くと認識して、毅然とした態度を取り続けることが大事ですが、同時に、日本は東西の架け橋になるという役割があると思います。