未知のウイルス相手とはいえ、すでに第6波。いいかげん、備えられそうなものなのにと思うのは国民だけではない。専門家たちの中にも、厚生労働省のやり方に呆れかえっている人は少なくない。
オミクロン株が蔓延する中、後藤茂之・厚労相が「医師は濃厚接触者を検査なしで陽性と判断していい」という世界が驚く“みなし陽性”の方針を出して逼迫する医療現場を一層混乱に陥れた。現場で診察にあたるナビタスクリニック理事長の久住英二・医師が怒る。
「とんでもない話です。現実的には、家族の中で奥さんと子供がコロナだったら、濃厚接触者の旦那さんもコロナの確率が高いだろうと想像できる。
しかし、我々医師が検査をせずに『あなたはコロナに感染しています』と診断を下したとしても、厚労省の感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS・ハーシス)にはコロナ患者として登録できない仕組みになっている。登録するには、何の検査で陽性になったかを記入しなければならないからです。そのため、患者はコロナ対策の公的支援を受けられない」
検査なしで医師に感染者と判断された人は、急に症状が悪化して入院が必要になっても、自治体や保健所から「コロナ患者」と認識されていないために入院調整が遅れる可能性がある。
こんな事態に陥った原因は検査キット不足だ。
「医療機関では明らかに症状が見られるような患者さんは抗原検査キットで迅速に陽性かどうかを判断します。精度は劣るが、15~30分で陽性か陰性かの判定結果が出る。陽性で持病があるなどハイリスクな患者さんには同意書にサインをしてもらったうえでメルクの抗ウイルス薬を処方し、すぐに治療が開始できます。ところが、その抗原検査キットが決定的に足りない」(同前)
さらに後藤厚労相は、症状が軽く、重症化リスクが低い人は、医療機関を受診せずに、自宅療養に入ることができるという方針まで打ち出した。ベッドが足りなくなるから“軽症者は病院に行くな”といわんばかりだ。