世界中から注目される、北京五輪男子フィギュアスケートの羽生結弦(27才)。ソチ、平昌と連続して金メダルを獲得し、今大会は3連覇がかかっている。羽生が、人生をかけて世界に届けたいものは何なのか。(全5回の第5回)
今回の北京五輪が、まさかパンデミックの中で開催されるとは誰が想像しただろうか。2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響で拠点とするカナダに戻れず、ブライアン・オーサーコーチ不在のまま、羽生は国内でひとりきりの練習を余儀なくされた。昨年11月には再び右足を痛め、シーズン初戦予定だったNHK杯を欠場。12月の全日本選手権で復帰して五輪出場権を獲得したが、けがの回復については予断を許さない。
最大のライバルと目されるネイサン・チェン選手(22才)は、全日本選手権の羽生を上回る高得点で1月の全米選手権を制し、万全の状態で北京五輪に臨む。さらに、1月の欧州選手権を制したロシアの新鋭、マルク・コンドラチュク選手(18才)も虎視眈々と五輪王座を狙う。日本からも、平昌五輪の銀メダリスト、宇野昌磨選手(24才)や鍵山優真選手(18才)が猛追する。
運命を分ける最大のポイントは、やはり「4回転アクセル」だ。フィギュアスケート解説者の佐野稔さんが語る。
「長い歴史をかけて技術や難易度が上がってきたフィギュアスケートですが、いま、次の時代へ突入するかどうかの転換期にあります。その扉を開くのが4回転アクセルです。もし、羽生選手が4回転アクセルを決めたならば、ライバルへの大きなプレッシャーになることはもちろん、新たな時代の幕開けも意味する。北京五輪はフィギュアの歴史においても重要な大会になるかもしれないと世界が注目し、期待しています」
だが、前人未到の4回転半は両刃の剣でもある。スポーツ誌ライターが指摘する。