すでに第6波の到来となった新型コロナウイルスの感染拡大。「いいかげん、備えられそうなものなのに……」と思うのは国民だけではない。専門家たちの多くも、厚生労働省の対応に呆れかえっているようだ。
欧米と日本の感染対策当局の対応の差が際立ったのがワクチンの「ブースター接種」(追加接種)と呼ばれる3回目だ。
世界では米英独仏が昨年9月にブースター接種を本格化させた。オミクロン株の感染が発見される前だったが、「接種から時間が経つほど抗体量が減って感染リスクが高まる」という考えからだ。英国は国民の65%が3回目接種を終えた。
だが、日本は大きく遅れて昨年12月に医療関係者、今年1月に高齢者への追加接種をスタートさせたものの、厚労省の追加接種の承認は、ファイザーのワクチンが昨年11月11日、モデルナの承認は医療関係者への追加接種を開始した後の昨年12月16日にずれ込んだ。その結果、3回目接種を終えたのは今年1月末時点でわずか408万人(国民の3.2%)にすぎない。元医系技官の木村もりよ医師が語る。
「日本では海外のような何万人規模の大規模治験ができないので、厚労省は本当はワクチン承認をしたくなかったはず。ブースター接種の承認も同様です。しかし、政治判断で特例承認せねばならなくなった。副反応が出たとしても自分たちの責任にならないように審議会の承認手続きが遅れに遅れたのではないか」
そうした感染無策の医系技官とは何者なのか。医系技官は医師免許を持っているキャリア官僚。国家公務員の採用試験が免除され、多くはキャリア官僚でも一部しかなれない審議官クラスに出世できる。
政府分科会の尾身茂・会長も医系技官OBで、現職で同省のコロナ対策の事実上のトップは医政局の大坪寛子・審議官(内科医)。元政府高官との“コネクティング・ルーム不倫”が報じられたあの女性官僚である。OBの木村氏は手厳しい。
「医療崩壊といわれるが、別の見方をすれば一部の医療機関や関連メーカーはコロナ対策費でバブル状態、利権のかたまりのようになっている。厚労省の医系技官はそうした“医療ムラ”に忖度しながら動いている。国民のことは考えていない」
※週刊ポスト2022年2月18・25日号