NHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の人気が高まっている。ストーリーの柱となるのは、深津絵里(49才)演じるるいとオダギリジョー(45才)演じる錠一郎(ジョー)が築き上げる大月家だ。ドラマに関する知られざるエピソードを、複数のスタッフに聞いた。
単身、岡山県から大阪府へ移ったるいの心の支えとなったのが、るいが住み込みで働く竹村クリーニング店だ。
「深津さんには3時間ほど、当時のアイロンのかけ方を教えました」
そう語るのは、クリーニング指導の藤巻幸介さんだ。
「私は普通にアイロンの指導を、と思っていたのですが、深津さんから『ここは、慣れないるいがアイロンをかけるシーンだから、不慣れに見えるよう、重たそうに持っている方がいいと思うのですが』と、ご自分で演技プランを出されていて感心しました」
緻密な演技プランに感銘を受けたのは、そろばん指導の木下和真さんも同じだ。
「るいさんがそろばんを弾くときに、リハーサルでは鉛筆を持ちながらやってはったんですけど、本番のときは置いてやられていて。『あ、本番は鉛筆なしでやらはったんですね』って聞いたら、『鉛筆を持っているとちょっと年配感、こなれた感が出るかなと思いまして。いま、このシーンは結婚したばかりなので置きました』とおっしゃったんです。なるほどなあと思いました」
10代から老年期までを1人で演じ切る裏側にはこのような努力があったのだ。ちなみに、京都でそろばんを使うのは、るいとジョーがふたりで開いた回転焼き(大判焼き/今川焼き)屋「大月」が軌道に乗り、売り上げの計算をしているシーン(62話)。
「あのとき、そろばんを素早く弾く手の動きのみが流れていますが、すべて深津さんご本人の手です。しかも、ちゃんと回転焼き1個何円で何個売れて、売り上げから材料費とか諸経費を引いて……と、実際に利益を計算しているんですよ。るいさんは大人になるまでにそろばん1級の資格を取っている設定なんです。なので『そろばん1級のような指さばきをしないと』と初めのうちは少し心配そうでした」(木下さん)
直接、木下さんが教えたのは2回だけ。それ以外はビデオで撮影した映像を見ながら猛特訓をしたという。1週間後、撮影現場で深津の指遣いを見た木下さんが、「はい、もう大丈夫です」とお墨付きを与えるくらい、見違えるほど成長していたという。制作統括の堀之内礼二郎チーフプロデューサーはこう話す。
「深津さんは、自分で感触をつかむためにやれることはご自身ですべてやる。回転焼きも実際に最後までご自身で作っています」