今年1月に開幕したラグビー新リーグ「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」。その発足に向け、中心的な役割を果たしていたのが、前年まで新リーグ法人準備室長・審査委員長を務めた谷口真由美氏だ。しかし谷口氏は、リーグの開幕を待たず2021年6月に協会理事などの役職を退いてしまった。なぜ谷口氏は突如としてラグビー界を追われたのか――。
その顛末を明らかにした新著『おっさんの掟~「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』を上梓した谷口氏と、その谷口氏に様々なアドバイスを送り、支援してきた川淵三郎氏(日本サッカー協会キャプテン)が対談した。JリーグやBリーグなど、数々のプロスポーツリーグを立ち上げてきた川淵氏が、日本のスポーツ界にいまだ残る“悪弊”について語った。【前後編の前編】
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ラグビー界の「壁」は厚かった
川淵:谷口さん、お久しぶり。ついにラグビーの新リーグ『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』が動き出したね。僕はラグビーのプロリーグの将来性は、非常に大きいと思っているんです。2019年、日本でラグビーワールドカップが開催されるときに僕が心配したのは、「外国人がたくさんいる日本代表チーム」を国民が受け入れるのか、ということでした。ラグビーはオリンピックやサッカーと違って、日本国籍を持たない代表選手が多い。そういうチームを、ラグビーに疎い日本人が国の代表だと思うだろうか、と。
ところが、いざ始まってみたら、僕の心配なんかまったく無用で、外国籍の選手でも代表の一員としてみんなが応援し、結束した。「いやあ、ラグビーってのはすごいなぁ」と心から思いました。それに、日本のトップリーグには、外国の超有名選手もたくさん来ていますから。ラグビーは北半球と南半球ではシーズンが違うので、南半球からすごい選手を呼べるんですよね。これはサッカーではちょっと考えられない。そういう意味ではとてもうらやましい環境ですよ。
谷口:とくにワールドカップ以降、トップ選手がたくさん日本に来てくれるようになりましたからね。
川淵:そうだよね。それを日本のファンがみんなで応援しているわけだから、観客の目も肥えてくる。そういうチームでは一緒にプレーしている日本人のレベルもどんどん上がるわけです。これはスポーツとして素晴らしいと感じましたね。
これから完全なプロ化が進めば、日本全体のラグビーのレベルアップにつながるし、お客さんも増えてくるはず。子供たちもラグビーに興味を持つようになり、競技人口も増える。日本ラグビーが世界レベルに飛躍するそんな未来を見据えて、日本ラグビーフットボール協会はプロ化を志向したんだと僕は思っていました。
だけど、今回の谷口さんの処遇を考えると、本当にその方向に力強く進んでいるのか、ちょっと疑念が湧いてきたのも事実だね。