犯罪を何度も実行する人は、基本的に最初に手を染めた型の犯行を繰り返す傾向がある。とくにその特徴が強くあらわれるのは詐欺なのだが、詐欺の場合は被害者が数年後に似たような詐欺被害に遭う逆の繰り返しもたびたび起きてきた。最近では、その被害のインターバルが極端に短くなっているのではと疑われる事例が出ている。ライターの森鷹久氏が、ネットで被害者の集いが可視化されたために、騙す者と騙された者、取り返したい人や儲けたい人が入り乱れる被害者LINEグループの混乱を追った。
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警察庁が公表しているデータによれば、特殊詐欺の認知件数、被害額ともに近年は減少傾向にある。発表資料をみると被害額は過去最高となった2014年の565.5億円から2020年には約半減したとはいえ、依然として高い水準で発生しており、深刻な情勢だといえるが、取材を通じてある傾向も浮き彫りになってきた。
これまで特殊詐欺について取材を続けてきたなかで、最近特に顕著だと感じているのは、繰り返し被害に遭う詐欺の被害者が多いことだ。この現象は決して偶然ではない。騙している側の動向を探ると、詐欺被害者をあえて狙っていることがわかる。
たとえば、オレオレ詐欺に使用される名簿の中には「すでに騙された人」のリストが存在している。一度騙された被害者に「金を取り戻す」などと言って近寄り、新たな詐欺を働きかけるのだ。一度も騙された経験がない人よりも騙しやすい傾向があるためで、詐欺師連中は詐欺被害経験者を「鉄板」と呼び、たやすいターゲットだと軽んじている。
そしていま、名簿を取り寄せずとも、被害者リストを入手できる場所がある。名簿は被害者をピックアップする作業が必要になるが、そこは被害に遭った人がみずから参集してくれるところだ。
馬鹿だと分かっていてもLINEグループをやめられない
「年末年始もずっとLINEグループの投稿を、目を皿のようにして読み込んでいました。馬鹿だとは分かっていますが、やめられないんですよ」
千葉県香取市在住、自営業の山本太さん(仮名・50代)は一昨年、知人から「仮想通貨」に出資すれば大儲けできると勧誘を受けた。知人は「すでに3000万円以上儲かった」と豪語していて、FacebookなどのSNSに、その派手なライフスタイルを見せつけるように画像や動画を数多くアップしていた。山本さんもそれを真に受け、預貯金の300万円と、新たに借入をした100万円の計400万円を数回に分けて「確実な出資先」だと知人から紹介された男性に現金で手渡した。