新型コロナウイルス・オミクロン株の感染が拡大する中、後藤茂之・厚労相が「医師は濃厚接触者を検査なしで陽性と判断していい」という“みなし陽性”の方針を出して逼迫する医療現場を一層混乱に陥れた。
さらに後藤厚労相は、症状が軽く、重症化リスクが低い人は、医療機関を受診せずに、自宅療養に入ることができるという方針まで打ち出した。ベッドが足りなくなるから“軽症者は病院に行くな”といわんばかりだ。
岸田内閣の発足後、厚労省の無策ぶりが急に目立つようになった。“みなし陽性”の方針のほか、ワクチン3回目接種の遅れなども、厚労省の失策といえるだろう。そういった呆れるような事態を招いた背景には、コロナ対策の主導権が官邸から同省に移ったことが関係しているという。元内閣官房参与の高橋洋一・嘉悦大学教授が指摘する。
「菅(義偉)さんは、コロナ対応を『厚労省には任せられない』と見切っていた。ワクチン接種も彼らに任せるととんでもなく遅れることがよく見えていたんです。だから河野太郎・ワクチン担当大臣を置いて官邸主導で接種体制を組ませ、ワクチン不足もファイザーのCEOを迎賓館に招いて供給を前倒しさせ、ワクチンの打ち手が足りないとなると抵抗する厚労省を押し切って『歯科医も打てます』と超法規措置でやらせた。こういう危機の最中にあっては政権が交代しても、厚労大臣やワクチン担当相は留任させないと対策の継続ができなくなる。
しかし、岸田さんは交代させた。それが失敗。コロナ対策の主導権が官邸からダメな厚労省に逆戻りしてしまったわけです」
大規模接種会場の閉鎖が失敗の象徴だろう。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広・医師が指摘する。
「冬場に感染者が増えることは専門家でなくても分かっていた。昨年秋の体制のままブースター接種に進めば冬までに高齢者の大半に追加接種できたはずです。しかし、世界で3回目接種が進んでいたにもかかわらず、(厚労省の)医系技官たちは追加接種の重要性を分かっていなかったから、昨年11月に大規模会場を閉鎖させてしまった。
厚労省が『3回目の開始は来年3月頃になる』と悠長に構えて計画をつくったことが、“日本は急いで追加接種しなくても大丈夫”と楽観視していた証拠です」