名実ともにNHKのエースアナに上り詰めたと評判の和久田麻由子アナ(33)。その実力を培った原点は、岡山県にあった。知られざる和久田アナの新人時代に迫る。【前後半の前編】
「打ちました! 一、二塁間抜けた!」
遡ること11年前の県営岡山球場。太陽が照りつけるバックネット裏の灼熱の観客席で、一人の女性が“実況”をしていた。
目の前では、高校球児たちが夏の甲子園出場をかけて真剣勝負を繰り広げている。観客はわずかしかいないため、たどたどしい実況は客席全体に響き渡った。周囲の観客たちは「なんだろう」と怪訝な視線を向けるが、その女性は構わず、額の汗を時折ぬぐいながら実況を続ける。声の主は、グラウンドを見つめながら「中継の練習」をする和久田麻由子アナだった──。
観客席で中継の練習
4月に向け、テレビ各局の番組改編が続々と進められるなか、NHKは和久田アナがメインキャスターを務める『ニュースウオッチ9』を土曜にも拡大する。
和久田アナは2021年末には2度目となる紅白の司会を務め上げており、「改編でエースの座は不動のものになった」(NHK関係者)。
NHKが和久田アナ頼りになる理由のひとつが、卓越した「アナウンス力」にある。
「『ニュースウオッチ9』では、打ち合わせ段階で誰よりも細かく放送内容をチェックし、どう伝えるか本番直前まで熟考している。
硬軟を読み分けるアナウンス技術も随一で、2020年まで担当していた動物番組『ダーウィンが来た!』のナレーションを離れる時は、『適任だったのに』と惜しむ声が局内でも多く聞かれた」(別のNHK関係者)
NHKの情報誌『ステラ』では、アナウンサーとしての心がけを、
〈どうしたら、番組のメッセージがまっすぐ伝わるのかということは、私も常に考え続けています〉(2020年11月20日号)
〈「見る人の気持ちになって伝える」という姿勢を大切にしています〉(2019年11月8日号)と語っている。
和久田アナはいかにして「伝える力」を養い、NHKを代表するアナウンサーに上り詰めたのか。その原点は、岡山県にあった。