香港証券取引所に上場もする中国最大の火鍋チェーンと言われる「海底撈火鍋」が2021年11月、世界で展開する1600店舗のうち300店舗を閉鎖すると発表して大きな話題を集めた。池袋や新宿など日本の店舗はまだ閉じていないが、積極的に出店させてきた巨大中国企業でも新型コロナウイルスの影響は免れないのかと話題になった。巨大チェーン中華料理が苦境にある一方、コロナ禍と自粛に疲弊する日本の街には、なぜか中国資本による新たな形態の中華料理店が増え続けている。俳人で著作家の日野百草氏が、急増する中華料理店をとりまく事情を探った。
* * *
「空きが出たらだいたい中国の人が入るね、コロナになってからは特に」
豊島区を中心に賃貸不動業を手掛ける営業マンに話を伺う。池袋、大塚、巣鴨といった山手線沿線とあって近年はテナント賃貸が大半を占めるという。あくまで彼のケースであり個々別の事情、業態により様々だが、2020年のコロナ禍に増えた中国資本とその関係者、相談も含めると日本人より多くなったと語る。
「条件や場所にもよるけど、中国人は言い値でテナントに入ってくれる。とくに居抜きなら文句は言わないよ」
池袋もまた時間の問題だったか――筆者は彼に話を伺う前に池袋を歩いたが、コロナ禍で従来の日本人の店舗、とくに飲食店は疲弊しているのがわかる。
かつて池袋は新宿歌舞伎町の次に「夜の街」バッシングを被った。なるほど中華料理店が増えている。それも、これまでのいわゆる中華街的な高級および中流クラスではなく中国本土と同じような大衆店、定食屋の類だ。もう皆さんお馴染みかもしれない、それほどまでにコロナ禍に増え続けている。5、6年前にも中華料理屋が増えたのだが、それともまた違う新たな「増殖」である。
「大陸の中国人だけど台湾料理と名乗ったりね。味つけが濃いので私は好みだけど」
筆者も今回のことも兼ね、池袋に限らず都内各所で新たに出店した中華料理屋に入ってみたが確かに味つけは濃い。そして量も多い。店内はシンプルな定食のみかバイキングが主流、また短期間で店名をコロコロ変える場合もある。それにしても画一的、これまでの各店独自色豊かな中華料理店とは一線を画する感じだ。激安大盛りは客を集められるかもしれないが客単価は低い。人件費はもちろん昨今の物価高、仕入れも考えればそれなりの資金も必要だろうに、いったいどんな中国人が出店しているのか。
「バックの資本があるね。あとは手引きする会社がある。このご時世、言い値で入ってくれるからありがたいけど、経営者自体が中国人の間でコロコロ変わったりしてる。それ以上はわからないね、契約する人のお金がどこから出てるか、なんてこっちに関係ないし」