「では、今日のぶん出しておきますね」──病院では見慣れた光景だが、本当にその薬は必要なのか。リスクはないのか──。ある意味で「命綱」となる処方薬で、かえって健康が損なわれるケースも存在する。処方箋を書くウラで、医師は一体何を考えているのか。そしてその処方薬について、本当はどう思っているのか。現役医師に話を聞いた。
【座談会に参加した現役医師たち】
A男(50才)内科クリニックを開業
B子(42才)総合病院の内科勤務
D美(49才)総合病院の整形外科勤務
生理痛や頭痛など幅広い症状に対応するのが解熱鎮痛剤。コロナワクチン接種後に服用したという人も多いはずだ。「痛みが出たときに備えて念のため」と処方を依頼する患者も少なくないが、医師たちの本音は手厳しい。
B子「患者さんから『頭痛や生理痛のときのために鎮痛剤が欲しい』と言われて出すけれど、私自身はのんだことがありません。特に『ロキソプロフェンナトリウム水和物』は名指しで出してほしいと言われることが多い人気薬。たしかによく効きますが、実は胃痛や呼吸困難、腎機能の低下など、副作用の報告も多い。
これをダラダラと長期にわたって処方する医師もいるようですが、ウイルス感染症のときに使うと重篤化する可能性が高いという報告が複数上がっているものの、それを知らない医師も多く、大きな問題だと感じます」
D美「整形外科では痛み止め薬を頻繁に処方しますが、その中でも『自分ではのみたくない』と、特に思うのは『プレガバリン』と『ジクロフェナクナトリウム』。両方、薬そのものの効能が強いぶん、長く使い続けると依存性が高い。
特にプレガバリンは神経障害性の痛みに効くといわれますが、しびれや神経痛は数値化できないゆえに、依存もしやすい。“お守り”のような感覚で処方を訴える患者さんもいますが、めまいや意識障害など副作用も報告されています。簡単に処方するような薬ではないと考えています」
B子「『プレガバリン』は即効性が高いから患者さんにも人気がありますよね。だけど、胃痛や吐き気などの胃腸障害、むくみや低体温を起こすことも少なくない。同じ病院の整形外科の医師を見ていると、患者さんにお願いされたからといって、あまりにも簡単に処方しすぎているように思えてなりません」
A男「処方のしすぎは、胃薬に対しても感じます。胃酸を強く抑える薬や、粘膜を保護する薬など、メカニズムの違うものがいろいろありますが、胃の痛みをとるなら1種類でいいはずなんです。それなのに一度に4〜5種類も出す医師もいる。6種類以上の薬を服用すると副作用の危険性が高まることがわかっているにもかかわらず、こうした処方がまかり通っているのはおかしな話です」
※女性セブン2022年2月17・24日号