体調不良の際に飲む「薬」。歳を重ねるごとに薬の数は増えがちだが、注意したいのが様々な「副作用リスク」だ。当然、どの薬にも効能とともに副作用はあるが、飲み続けることで体を「老化」させるリスクはある。
老化現象が加齢によるものか、薬の副作用によるものかを見極めるのは難しいが、厚労省の調査では、75歳以上で7種類以上の薬を飲んでいる人の割合は24.8%(2018年)。4人に1人がそれだけの多剤併用になっている。処方された薬の効能と副作用をよく知らずに飲み続けていると、知らぬ間に体に不調をきたしてしまうリスクが考えられるわけだ。
『週刊ポスト』は、医薬品類の承認審査や安全対策を担うPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページで公開されている医薬品の添付文書から、副作用に「脱毛」の記載がある薬をリストアップし、専門家の協力のもと、中高年が服用する機会の多い分類の薬について表にまとめた。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師が語る。
「加齢による現象とは別に、薬の副作用として体が“老化現象に近い状態”になることがあります。薬には効果があると同時に副作用が必ずあり、効果が強い薬ほど副作用も出やすくなる。特に歳を重ねると代謝が悪くなり、薬が効き過ぎることがあるので注意が必要です」
多くの男性にとって薄毛の悩みは尽きない。薬の副作用による「薬剤性脱毛症」という症状もあり、歳とともに薄くなってきた頭髪が、加齢によるものではない可能性もある。副作用欄に「脱毛」と記載されている薬には、降圧剤や糖尿病治療薬といった生活習慣病に関する薬が少なくない。銀座薬局代表薬剤師の長澤育弘氏の解説。
「詳細なメカニズムは不明ながら、降圧剤は血管に作用して頭皮の血流が少なくなるので、髪を育てる栄養が十分に行き渡らず毛が抜けていく可能性が考えられます」
解熱鎮痛剤や抗リウマチ薬にも「脱毛」の副作用が報告されている。
「解熱鎮痛剤の非ステロイド性抗炎症薬は血管を細くして血圧を上げる作用があります。血管が細くなるということは、頭皮の血流が少なくなり、脱毛につながる場合がある。一方、リウマチは白血球の過剰反応で炎症が起こる病気ですが、抗リウマチ薬には白血球の細胞分裂を抑える効果があります。しかし、それが髪の毛の細胞にまで影響を与えて、髪が育ちにくくなる可能性が考えられます」(長澤氏)