2月10日、北京五輪フィギュアスケート男子シングルのフリーが行なわれ、3連覇の期待がかかった羽生結弦選手は果敢に4回転半に挑むも転倒、惜しくも4位に終わった。一方、他の日本勢では鍵山優真選手が銀メダル、宇野昌磨選手が銅メダルに輝く大健闘を見せたが、翌11日の新聞やテレビでは、羽生選手を中心とした特集が目立った。
たとえば朝日新聞の朝刊1面トップは「4回転半 一番近づけた」の見出しとともに羽生選手の写真が大きく掲載された。毎日新聞は「18歳鍵山『銀』」と鍵山選手の写真がトップだが、続いて「宇野『銅』 羽生4位」とあり、羽生選手の写真はあるが宇野選手の写真はなかった。スポーツ面では「未踏4回転半 貫いた羽生の美学」とあり、他の2人より大きな扱いで4回転半の連続写真まで掲載していた。スポーツジャーナリストが、事情を説明する。
「フィギュアだけでなくスポーツ界全体を見回しても、羽生選手ほどの国際大会での実績、そして国民的人気を誇る選手はいません。今回の五輪では、羽生選手の3連覇、そして4回転半の成功に最大の関心が集まっていた。新聞各紙としても、鍵山・宇野両選手の功績は讃えつつ、一番は羽生選手の挑戦を伝えようということになったのではないでしょうか。
羽生選手は金メダルの最有力候補だったため、事前の取材においても他の2選手よりも手厚くしていました。そうした取材成果を書きたかったということもあるでしょう」
さらに分かりやすかったのがテレビ各局の朝の情報番組で、いずれも羽生選手の4回転半への挑戦がトップ特集として長時間放送されていた。これにはさすがに「やり過ぎでは」との声も挙がっている。
「ある情報番組では、羽生選手の特集が終わったあとにようやく、鍵山・宇野両選手の試合後の記者会見を放送しましたが、そこでも中心になっていたのは、2人が羽生選手への敬意と感謝を語った場面でした。鍵山選手、宇野選手にもドラマがあり、それぞれに魅力と個性に溢れた選手なので、もう少しフォーカスしてあげてもよかったんじゃないでしょうか」(同前)