歳を重ねるごとに薬の数は増えがちだが、注意したいのが様々な「副作用リスク」だ。当然、どの薬にも効能とともに副作用はあるが、飲み続けることで体を「老化」させるリスクがある薬もある。
『週刊ポスト』は、医薬品類の承認審査や安全対策を担うPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページで公開されている医薬品の添付文書から、副作用に「認知機能障害」の記載がある薬をリストアップ。専門家の協力のもと、中高年が服用する機会の多い分類の薬について表にまとめた。
「物忘れが増えた」「ボンヤリする」という認知機能の低下が、薬の副作用によって生じることがある。副作用欄には「認知機能障害」といった記載がある。銀座薬局代表薬剤師の長澤育弘氏はいう。
「失禁などを抑える頻尿治療薬の『抗コリン薬』は脳内の神経伝達に影響を及ぼし、それが認知機能低下につながる可能性は否定できません。ただし、薬の副作用と認知機能低下の因果関係を証明するのは難しい。認知症と認知機能障害は異なり、認知症は常に認知機能が低下していて進行していく症状。対して認知機能障害は、統合失調症などのように精神疾患の一つと考えられています」
認知機能障害の原因が薬の副作用にある場合、「薬剤性認知機能障害」といい、疑いがあるなら医者や薬剤師に相談することが必要だ。
薬を服用していて体調に異変を感じたら具体的にはどうすればいいのか。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師はいう。
「医師によっては細かい副作用を知らずに処方するケースもあります。また、処方された薬の用量が少なくても飲み続けていると、歳を重ねるにつれて薬の成分が排出されにくくなり、体に溜まって副作用につながることがあります。なので、“ずっと処方されてきたから大丈夫”と過信することにも注意が必要です。
とはいえ、自分で調べることも重要ですが、自己判断で薬を止めるのは危険。まずはかかりつけの医師、そして薬剤師にお薬手帳を見せるなどして相談することが大切です。特に薬剤師は複数の病院でたくさんの薬を処方されていたとしても、お薬手帳を見て総合的に飲み合わせなども判断してくれます。同時に何種類も薬を飲んでいるなら、一度相談してみることを検討したい」
副作用が疑われたら、まずは専門家の助けを得ることが肝要だ。
※週刊ポスト2022年2月18・25日号