日本航空とANAホールディングスが発表した2021年4~12月期連結決算によれば、どちらも赤字幅は縮小、いずれも国内線の旅客需要が年末にかけて回復したことと貨物事業の好調のおかげだという。新東京国際空港(成田空港)の2021年実績をみても、総旅客数は前年比50%減であるのに対し、国際航空貨物量は5万961回という発着回数も貨物量259万1255トンも前年より約3割増加で過去最高を記録した。コロナ禍、航空貨物の需要は世界で急速に高まっている。俳人で著作家の日野百草氏が、航空貨物需要の高まりと日本の国際空港が置かれている現実についてレポートする。
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「いまや航空貨物が命綱です。うちでも単価の高い小口の商品やアフターパーツなら航空便でもペイできます。船(コンテナ船)なんて待ってられません」
複数の商社マン、バイヤーが異口同音に話す航空貨物という生命線、コロナ禍の世界的な港湾の混乱と日本の「買い負け」、としてコンテナ船やコンテナすら「取り負け」と連戦連敗が続く日本のロジスティクスにおける「命綱」が航空貨物だ。2021年の成田国際空港(以下、成田空港)の貨物量は259万1255トンで過去最高を記録した。海が駄目なら空、日本だけでなく世界の空港も貨物便が急増している。
「でも航空便が高くつくのは確かです。うちの場合はコロナ前より4倍、下手すると5倍の運賃が掛かってます。クライアントには受け入れてもらうしかありません」
中堅電子部品メーカーの営業マンが成田空港の現状を嘆く。一連の「買い負け」と経済の「安全保障」(もちろん「食の安全保障」も加わる)の取材の中で「航空貨物」という切り口もまた日本の危機をはらんでいると考え、取り上げさせていただくこととした。彼は電子部品といっても電子材料だけでなく包装資材、産業資材、合成樹脂など多岐にわたり取り扱っている。
「クライアントから(提示額が)『強気だねえ』なんて言われることもありますが、高いのは事実ですから。まとまった数を確保するだけでも大変なのに、難しいですね」
もう少しまともな空港が日本にあれば
ここでは一例として電子材料を挙げるが、半導体、基盤、電池、液晶、成形材料、フィルムなど産業に欠かせないこうした部材の数々も「買い負け」の憂き目を見ている。個人消費者の話とするなら新車の納期が車種によってはありえないほど長期に渡るのも、PCパーツが値上げの一途をたどるのも電子材料の高騰と日本の「買い負け」が一因にある。