パンデミックから2年経過した現在もいまだに収束の目処が立たない新型コロナウイルス禍。一方、今年1月期のテレビドラマを眺めてみると、コロナやマスクの描写はほとんど見られなくなった。
コロナ禍に見舞われて以降、テレビドラマでは数多くの“コロナ表現”が取り入れられてきた。2020年夏には緊急事態宣言下でのオンライン同窓会をテーマにしたミステリードラマ『リモートで殺される』(日本テレビ系)が放送。また同年秋にはソーシャルディスタンシング時代の恋愛を描いた『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』(同)がヒットした。
2021年に入ってからも、プロレスラーが主人公のホームドラマ『俺の家の話』(TBS系)では、現実と同じように外出時にマスクを着用する世界が描かれた。他にも『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系)や『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)など、コロナ禍が舞台となったり現実世界を想起させたりするドラマが相次いだ。
しかし2022年1月期のドラマにこうした表現はあまり見られない。高視聴率で話題のドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)では、バス車内で誰もマスクを着用していない光景を映している。同じく人気のドラマ『DCU』(TBS系)は海上保安庁に新設された架空の組織が舞台だが、会議を行う際に多数の人々がマスクをせずに集まるシーンがある。どちらもコロナ前の世界、またはコロナ収束後の世界を彷彿させる。
なぜ“コロナ表現”は激減したのだろうか。その背景には視聴者が心理的に求めるものの変化があるようだ。テレビウォッチャーでコラムニストの飲用てれび氏はこのように説明する。
「テレビドラマと現実の関係をあえて2つに分類すれば、『現実から離れたドラマ』と『現実を反映したドラマ』になると思います。それぞれ『現実を忘れさせてくれるドラマ』と『現実の理解を促すドラマ』とも言い換えられるでしょう。
コロナを描写したドラマが減少しているということは、視聴者の心理としては、『コロナ禍を反映し現実の理解を促すもの』から、『コロナ禍から離れ現実を忘れさせてくれるもの』へと、テレビドラマに求めるものが変わったのかもしれません」