北京五輪開催を機に、これまで燻り続けていた韓国での“嫌中感情”がかつてなく高まっているようだ。発端となったのは、2月4日の開会式における国旗掲揚セレモニー。中国の少数民族「朝鮮族」代表の女性がチョゴリ(朝鮮半島の伝統衣装)姿で登場したことに、韓国世論が猛反発したのだ。
韓国・漢陽女子大学助教授の平井敏晴氏がその時の様子を語る。
「ラジオのクラシック音楽番組を聴いていると、突然、中国と北京五輪を批判するリスナーの投稿が紹介されたのです。番組とはまったく無関係の投稿が読み上げられたことに違和感を覚えました」
韓国のネットやSNS上では「中国が韓国の文化を奪おうとしている」といった中国批判が飛び交い、次期韓国大統領候補の李在明氏までもが「文化の盗用」と中国を激しく非難した。
開会式でチョゴリを着用していたのは同じ朝鮮民族のはず。なぜ韓国国民はここまで憤っているのか。前出・平井氏が解説する。
「中国がチョゴリ姿の朝鮮族に五星紅旗を運ばせたシーンは、韓国が歴史的にも、現在においても『中国の一地方にすぎない』と主張しているように見えます。ネット上でもそうした意図の演出だと断罪する書き込みが見られます」
もともと中国への警戒心が強い韓国だが、2000年代以降はさらに強い危機感を持つようになったという。
「2010年代になると、リゾート地の済州島で中国人による土地の買い占めや犯罪が大問題に。黄海沿岸では、韓国の領海内で不法操業する中国漁船と韓国当局の衝突が後を絶たず、中国人船員の抵抗に遭った韓国海洋警察職員2人が死傷する事件も起きました。今や、韓国国民の中国への憎悪は“反日感情”を上回っていると言っても良いでしょう」(平井氏)
2017年には、米軍THAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備を巡り、中韓が衝突。中国政府による韓国への団体旅行禁止措置のほか、韓国系スーパーの閉鎖や韓国製品の不買運動が相次ぎ、韓国経済は深刻なダメージを負った。